第七十三話 【カンピオーネ編】
[3/14]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
》とは、草薙護堂の胸ポケットに納まっていた物だ。
ユカリはその物を見たわけではないが、手のひら大の大きさのメダルで、その中に神秘を内包した神具である。
その名前をゴルゴネイオンと言う。
もしこの時、アテナから発せられた言葉が『ゴルゴネイオン』であったなら、きっとユカリは思い至らなかった。
しかし、アテナが口にしたのは蛇。
奇しくも今日草薙護堂の胸のうちでとぐろを巻く蛇を見てしまった後であった。
「知っておるなら申せ。妾が求めるはゴルゴネイオン。その証左によればおぬしを見逃してやろうよな。しかし…もし口をつぐもうものなら、安らかなる死を与えよう」
自分が圧倒的な優位なものと確信しているからこその物言いだった。
ユカリは大きく息を吐くと、目の前のアテナを見つめ返す。
「…別に教えてもいいのだけれど」
とユカリは前置きしてから問いかける。
「その蛇?を手に入れてあなたはどうするの?」
「妾は蛇を手に入れ古の三位一体の女神としてこの世界に現れるであろう。それこそが妾の望みなれば」
「………」
「………」
「え?それだけ?えーっと…なんかニュアンス的に本当の姿を取り戻すとか、第二形態に変身するとかそんな感じ?」
「そうであるな」
「本当にそれだけ?」
「むっ…そう言われると何かしてみたくなるものよな。…ふむ、三位一体の女神に戻った暁にはこの醜く歪んだ人間の社会に死をくれてやるのもやぶさかではないな」
その言葉を聞いたユカリは少し思案し、言葉を発する。
「……あなたには醜く歪んでいるように見える人間社会でも今の時代は数々の娯楽に溢れているのに」
「娯楽とな?」
例えば?と女神は問いかけた。
「食は人間の最大の欲求ではあるのだけれど、同時にこの上ない娯楽よ。美味しい物を食べれば自然と表情が崩れるものだし、きっとあなたのその険しい顔も緩むと思うわよ」
「食べ物なぞ自然の恵みのみでよかろうものよな」
「あなたは本当に美味しい物を食べた事が無いのよ。人類の研鑽の上に生み出される料理の数々は口にすれば至福の時間を味わえると言うのに」
食べた事が無いのなら今度私がご馳走するわとユカリ。
「ふむ、少し興味が湧いてくる提案はあるが、やはりこの夜を恐れぬ人間の愚か振りには神罰を下さねばならぬと思うゆえな」
だからゴルゴネイオンの所在を教えろとアテナが言う。
しかし、ユカリは口を閉ざす。
「教えぬか…ならば仕方ない。神の力を示した上でもう一度問う事にしよう」
そう口にしたアテナの背後からまだ夕方だというのに闇が広がった。
人口の明かりはことごとく飲み込まれ、辺りを闇が支配する。
それはアテナが行
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ