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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#02 "She grins from ear to ear"
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Side ゼロ

「ゼロ、ちょっと聞きたい事があるんだけどさ……」

少し目を反らしながら俺に訊ねてくるロック。
この時期に、という事は先ずレヴィの事だろう。

先日我がラグーン商会に持ち込まれた仕事。第二次大戦の終戦間際、海中に沈んでしまったドイツ海軍の潜水艦。その艦に積み込まれた絵を回収するという、"一見"は楽な仕事。
紆余曲折はあったが、絵は無事回収し依頼者へと無事送り届けた。
怪我人も出ず、ラグーン号にも大した被害はなく、先ずは満足すべき結果だと言える。

だがまあ、些か問題はあった、いやむしろ残ったというべきか。

問題の当事者はレヴィとロック。
(ベニーあたりに言わせればラグーン商会(うち)で起きる問題の内、八割はレヴィが関わっている、だそうだ。
それを横で聞いていたダッチは何も感想めいた事は言わず、ただ溜め息をつくだけだったが)

内容は此れからロックが語ってくれるのだろうが、恐らくは例の"正常位"云々に関わる話だろう。
さて、俺としてどうするべきか。
二人の問題に割り込むのも気が引けるが、話だけ聞いて後は知らん、と言うのも愛想が無さすぎるな。
まあ、取り敢えずはロックの話を聞いてから考えるか………














Side ロック

「あ………」

部屋の片隅に置かれたベッドにもたれ掛かるように座り込んでいた"それ"を見つけたのは俺が先だった。

他の乗組員達とは明らかに異なる服装に多少の期待と予感を覚えながら近づいてゆく俺。
背中側から照らされるライトの光の中に頭骨から引き剥がした帽子を差し入れる。

「レヴィ、この骨が艦長だろうな」

光の輪の中で帽子中央にある徽章が鈍く輝く。
どうやら間違いはないらしい。
レヴィも納得したのか背中のボンベを降ろし部屋の捜索を始める。

俺は帽子を艦長(確かアーベという名前だったはずだ)へ返そうと"彼"に向け振り返った。

その際気付いたのだが、服の胸あたりには十円玉くらいの穴が開いていて縁には黒ずんだ染みがこびりついていた。

撃たれたのか。

自然とそんな感想が心に浮かんでくる。
日本に住んでた頃なら直ぐに銃と結び付けることなんて出来はしなかっただろう。
いや、それ以前にこんな海の底で五十年以上も前に死んだドイツの軍人の死体に廻り合う事なんて有るわけがないのだけれども。

「たしかアーベって野郎だったな。勲章が其処らにねえか?
いい金になる…と、ちょっと来てみろよ」

床に片膝をつき妙な感慨に耽っていた俺に、部屋の奥の死体を調べていたレヴィが呼び掛けてくる。

何事かと彼女の肩越しに覗き込んでみれば、そこにあったのはやはり白骨化した死体。
この部屋にたどり
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