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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十話 孤立無援
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呑みには出来ない、扱いが極めて難しいのだ。

『分かっている。しかし現時点では我々は何の情報も無いに等しい。闇夜を明かりも無しに歩いている様なものだ。これでは何時躓くか分からぬ』
沈痛と言って良い声だ。ブラウンシュバイク公の声は低く沈んでいる。追い詰められている、帝国最大の実力者が追い詰められている……。

「しかし、間違った情報を送ればそれだけで躓きますぞ」
『それも分かっている。危険が有るのは承知の上で卿に頼んでいる』
「……」
私が黙っていると今度はリッテンハイム侯が口を開いた。

『卿が不安に思うのも無理は無い。しかし判断するのは我らだ。卿に責めを負わせるような事はせぬ。頼む、我らを助けて欲しい』
已むを得ぬか……。
「……分かりました。どこまでお役にたてるかは分かりませんが微力を尽くしましょう」
『うむ、済まぬ』

帝国は不安定な状況にあると二人は言った。地球教への対応は反乱軍、いや同盟との協力が必要とも言った。つまり地球教対策を利用して協調体制を築く、共通の敵を叩く間に国内体制を安定させる、そういう事だろう……。生きて帝国には帰れないかもしれない、ふとそう思った。

例え責めはせぬと言われても己にも矜持というものが有る。場合によっては死を以って償う事になるかもしれん……。出来る事ならもう一度オーディンに戻りたかった……。しかしフェザーンで死ぬことも有り得たのだ、どうやら異郷の地で一人果てるのが自分の運命なのかもしれん……。

私もよくよく運のない男だな、……それも已むを得ぬ事か……。


感慨に耽っているとブラウンシュバイク公の声が聞こえてきた。
『早速だが卿に聞きたい事が有る』
「はい」
『先日の話し合いだが反乱軍、いや同盟だったな、あちらの代表がトリューニヒト国防委員長とシトレ元帥だった。どういう事だ? 何故最高評議会議長ではないのだ? わしもリッテンハイム侯もいささか不審に思っているのだ』

『レムシャイド伯、勘違いはするなよ。私もブラウンシュバイク公も格が釣り合わぬと卿を責めているのではない。そこに何らかの意味が有るのではないかと思っているのだ。これからの事を考えれば読み間違いは出来ぬ、どんな些細な意味でも誤りなく読み取らねばな』

なるほど、そこに不審を感じたという事は同盟との協調体制を重視する、そういう事だな。判断は間違っていなかったようだ……。二人とも厳しい表情をしている、意味を読み取るというのは嘘ではあるまい。

「トリューニヒト国防委員長とシトレ元帥を選んだのはヴァレンシュタインです。私も御二方と同じ疑問を抱き彼に問いただしました」
私の答えに二人は顔を見合わせた。そして公が問いかけてきた。

『それで、何と言った』
「最高評議会議長よりもあの二人の方が良いと
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