フェアリー・ダンス編
新世界編
説得
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すら斬る。
斬られた雷撃は大きく俺を外れ、後方へ散った。
「へえ〜、面白い刀持ってるじゃない。じゃ、これはどう?」
今度は頭上に巨大な氷塊が生まれ、俺に覆い被さってくる。
接触の刹那、俺は剣先を氷塊に突き刺し、ぐっと押し込んだ。
バッカアアァァン、という音がして氷塊が砕け散る。
「この!調子に乗るな」
「…………」
辺りの空気が歪んで突風を巻き起こす。それだけではない、そこへ僅かに火の粉が舞ってやがて、業炎の竜巻となる。四方を囲まれ、隙間に逃れることはできない。
そして―――
竜巻が一点に集中した。
「ふん、他愛も無いわね」
そういう彼女には疲労の色が見える。
が、しかし―――
突然、竜巻が消えるとそこから無傷の人影が出てきた。
「終わりか?」
戦闘開始から初めて発した声、それには興奮も、憤りも、冷たさも、何もなかった。
ただひたすらに、穏やかな声だった。まるで、労るように、慈しむように。
「………ッ!?なめないで!!」
さらなる大魔法。自身がもっとも得意な風系統の最強呪文。一般プレイヤーでは触媒無しには行使すら不可能な絶対の力。
空に雷雲が発生し、人間の知覚を越えた速さでレイに降り注ぐ。
だが、それさえも彼には効かなかった。
全ての落雷を刀で斬る。一本たりとも彼に危害を加えることは出来ない。
「……なんなの、何なのよ。あんた!!」
ガクッ、と体がぐらつく。疲労がピークに達していた。
「彼の世界では『紅き死神』、『レッド狩り』と呼ばれていた。ここでは……まだ無名だな」
……彼の世界。そこが何処なのかは朧気に分かる。
HPが無くなれば死んでしまう世界。
……自分はこの世界で何回死んだだろうか……否、殺されただろうか。
当時の記憶は心の奥に封印して、忘れ去った。
残ったのはただ破壊を望む、虚無の感情。虚ろな意志。
突如として身を襲う『恐怖感』。視界が暗転し、落下する。
「俺はある理由によって、世界樹に登らなきゃならない。そこの攻略は困難と聞いた……頼む、君の力を貸してくれ」
――無理だよ。あたしは破壊することしか出来ない。誰かと一緒にやるなんて……出来ない。
「大丈夫さ。完璧な人間なんていない。俺も、少し前まで幻想の力に溺れて、自分の力を見誤ってた。君は自分の力をよく見ることが出来てるよ。それは立派なことだ」
――どんなに立派でも、関係ない。あたしは壊す。ただそれだけ。力が全てよ、何時の世も。どんな世界でも。
「それも1つの真理だ。有史以来、人間は
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