第一章
[2]次話
大阪の目目連
新島結衣、肩にかかる位の長めのおかっぱで穏やかな顔立ちと優しい目の眼鏡の少女、胸はかなりある。背は一六〇程だ。よく地味と言われる外見と性格だがこの時はお洒落をして大阪の街を二人でいた。
そのうえでだ、一緒にいる交際相手の沼津誓一郎に言っていた。同じ神戸の八条学園高等部普通科の二年生でクラスメイトでもある。長方形の顔に小さめの明るい目で広いが薄い唇と白い肌を持つスポーツ刈りの少年だ。背は一八〇近くあり痩せている。
「あの、ちょっとね」
「ちょっと?」
「年末だから」
それでと言うのだった。
「人が多くて」
「いやいや、ここ大阪だろ」
誓一郎はその結衣に言った。
「もう何処でもだろ」
「人が多いっていうのね」
「人がいない場所なんてな」
それこそとだ、難波の戎橋商店街の中で言うのだった。
「もうな」
「ないのね」
「そうだろ」
こう言うのだった。
「だからさ」
「それは言ったら駄目なのね」
「結衣ちゃんも大阪じゃないか」
その住んでいる街はというのだ。
「俺もそうだけれど」
「けれど私鶴見区でね」
結衣は自分が住んでる場所の話をした。
「こうした繁華街とはね」
「ああ、離れてるから」
「住宅街だから」
その住んでいる場所はというのだ。
「それでね」
「苦手なんだ」
「どっちかって言うとね」
「そうなんだね、まあ俺はね」
今度は誓一郎が自分の話をした。
「家東天下茶屋でここにもさ」
「よく来てるのよね」
「いつもみたいに」
「それでなのね」
「慣れてるよ」
「そうなのね」
「うん、けれど結衣ちゃんがそうなら」
彼女を気遣って言った。
「ちょっと休もうか」
「そうする?」
「それで休むなら」
ここでだ、誓一郎は。
如何にもスケベそうな笑顔になってだ、こう言った。
「いいところ行こうか」
「ホテルよね」
「わかる?」
「すぐにね」
結衣は顔を赤くさせて答えた。
「わかるわよ」
「そうなんだ」
「わからない筈ないでしょ」
結衣はこうも言った。
「それこそ」
「俺そんなにエロいかな」
「かなりね」
これが結衣の返事だった。
「皆そうらしいけれど」
「そう言われると俺だけじゃないからな」
「そうよね、男の子はね」
「それで俺もだよ」
「もっと言ったら女の子もだけれど」
即ち自分達もというのだ。
「やっぱりね」
「そういうこと好きだね」
「好きじゃないと」
それこそというのだ。
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