第一部
第四章 いつだって、道はある。
イタチ
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ノっているかもしれない。実はイタチにはそうしなきゃいけない複雑な理由があったとか、何かに取り付かれてたとかなんとかで、最後はにっこり笑いながら許せサスケって、そういいながら倒れてしまう、そんなちょっとお涙頂戴な路線でも悪くないだろう。案外父だってシナリオに手を加えたりしているのかもしれないし、ね、そうだよね? 面白そうな演劇だね、演技もすっごくリアリティがあるし、きっと色んなところからうちはに演技してほしいってオファーくるよ、ね、そうでしょ?
不安にかられて部屋を一つ一つ探しながら抱いていた淡い淡い、余りに淡すぎる最後の望みすらももう完全に潰えてしまった。最初からわかってたんだ、うちは一族全体で演劇するなんて、そんなこと考え付く父じゃないし、たとえやったってこんな風にサスケを巻き込んだりするわけないのに。トマトケチャップなんかのわけがないのに。
でもそうやって現実逃避をしようとしたサスケを誰が責められよう。いつもと変わらない日常、帰っていたらいきなり一族が皆殺されて、しかも殺した犯人が兄だっただなんて、誰だって逃げたくなるはずだ。挙句あんな幻術を見せられて。
――そんだけの理由のために……皆を殺したっていうの……?――
ああこれが幻術ならいいのに。悪夢ならいいのに。目を覚ましたらどうしたのサスケ、悪い夢でもみたのかなんてミコトかフガクかが問いかけてくれればいいのに。
――それが重要なのだ――
立ち上がる。あくまで罪悪感は感じていないといわんばかりの声。悲しみが怒りと憎悪へと形をかえる。うおおお、と叫んで、走り出す。
――ふざけんなぁああああああ!!――
イタチは一歩動いただけだった。
その拳がサスケの腹にのめりこむ。けは、と唾液を吐き出し、サスケは力なく倒れる。顔を上げた先に視界に入ったのは両親の死体。じわりと涙が溢れ出る。かたん、とイタチの足が視界に入る。
――こわい……
それは人間として最も原始的な感情。本能が金切り声をあげる。逃げろ、逃げろ、逃げろ!
――こわい!
――うわぁあああああああああああ!!――
叫んで逃げ出す。部屋の戸を押し開け、足に靴をつっかける。本当はその暇すら惜しかったけれど、これは遠くに逃げるためだ。里の中心部、火影邸。あそこに行けば助けてもらえる。あそこでなくとも、うちはの敷地の外で、どこか強い忍びのいるところに逃げ込んで事情を話せばきっと匿ってもらえるはずだ。走って走って走って、逃げて逃げて逃げて、速く速く速く。自分に命令を言い聞かせながら逃げ続ける。兄が怖くて、怖くて、涙を流しながら、サスケは哀願した。
――殺さないでぇええええ……っ! あぁああああぁああああ!!――
喉が張り裂けるまで泣き声をあげ、そしてサスケはふと立ち止まった。イタチが前方に立っていた。
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