第一部
第四章 いつだって、道はある。
イタチ
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うちはの中でも特に中がよかった人達だ、なのに。
視線が自分の家に向く。
――父さん、母さん……――
がら、と引きとを押し開け、ごくりと息を呑む。
――父さん? 母さん?――
焦った少年の声が真っ暗な屋内に虚しく響いた。いないの? と幾段泣きそうなくらいの焦燥に満ちた声が問いかけた。靴を脱ぎ、鞄を下してゆっくりと歩いていく。
怖い。
胸がはちきれそうになるほど嫌な予感を無理矢理胸の奥に押し込み、部屋を一つ一つ回る。
この部屋にはいない。
ではどうか次の部屋にはいますように。
この部屋にもいない。
次の部屋こそ、次の部屋こそ。
そう願いながらも、見つけないほうがいいのではないかという思いが過ぎる。
何かの物音。慌ててそちらに向かって走っていく。ばくばくと心臓が鳴り続ける。一番奥の部屋。木製の両開きのドアに、真鍮の取っ手。そうっと手を伸ばして取っ手を掴もうとするその一瞬前、部屋の奥からなんなのか判別のつかない音がした。サスケの脳はそれを嫌な音だとカデコライズする。冷や汗が頬を伝った。心臓が叫び声をあげて、警告の音を発した。
――誰かいる……
さっきのあの視線。足が震えだし、息があがる。金縛りにあったかのように動かなくなった体に必死に命令を下す。
――動け……
歯を食いしばり、がくがく震える足を前に向かって運びながら、動け、と念じる。
――動け……!
震える両手を真鍮の取っ手にかける。
――動け……!!
扉が、開く。
――父さん、母さんッ!?――
真っ暗な部屋を、窓から差し込む月光が白く照らし出している。もともと色白なミコトは血の気を失い、血を流しながら部屋の真ん中に倒れていた。フガクは妻ミコトを庇うかのようにその上に倒れている。駆け寄ったサスケは、ふと足を止めた。真っ暗で見えなかった部屋の奥から近づいてくる足音。月光に照らされだしたその姿に、サスケは慌てて後退した。本能的な恐怖が心を蝕む。どん、と扉がサスケの退路を阻んだ。
月光に映し出された姿に目を見開く。赤い瞳。写輪眼を使った兄の姿に、サスケは泣き出しそうになりながら喚いた。
――兄さん!? 兄さん、父さんと母さんが……なんで、どうしてぇえっ!? 一体、誰がぁああっ……!?――
しゅる、と風を巻き上げながら飛んできた手裏剣がドアに突き刺さる。一拍おくれて痛みが襲った。左肩から赤い血がふきだす。そしてサスケは悟った。
イタチは、敵だ。
――何するんだよっ、兄さん!?――
――……愚かなる弟よ……――
イタチが目を閉じた。長い睫が震え、再び目が開く。まんげきょうしゃりんがん、何の意味も持たない言葉の羅列が微かに鼓膜を震わす。
そしてその瞬間、世界は鮮血の色をもって逆流した。
鮮血
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