プレーンシュガー
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可奈美と体が入れ替わったと言っても、ラビットハウスの業務自体は変わらない。
ランチタイムを終え、可奈美の体で動くことにも慣れてきたところで、可奈美は一息つきながらラビットハウスのカウンター席に腰を落とした。
「お疲れ様だね、可奈美ちゃん」
ココアに肩を叩かれることで、可奈美はようやくそれが自分に向けられた発言だと気付いた。
「ココ……あれ? 可奈美ちゃん、ココアちゃんのことなんて呼んでたっけ?」
「どうしたの可奈美ちゃん?」
「あ……えっと……」
いつの間にか、可奈美の目が泳ぐ。必死に平静さを保とうとカウンター席を雑巾で何度も磨いていると、机が輝いてきた。
「な、何でもないよ。お姉ちゃん」
「! 可奈美ちゃんが……お姉ちゃんって……お姉ちゃんって呼んだ!」
(普段は呼んでいなかったのか……!)
可奈美は戸惑いながら、脳内にあったイメージを訂正する。
「そ、それよりもお客さんも落ち着いてきたし、そろそろ休憩しない?」
可奈美はフロアを見渡しながら提案する。
先ほどの始業式帰りの高校生たちが去り、ディナータイムまでの間は客足が遠のいている。今、店内に腰を落とす客の姿はなかった。
「そうだね! あ、可奈美ちゃんはお昼食べた? ハルトさんも呼んで、一緒に食べようよ!」
「う」
ココアの提案に、可奈美は言葉に詰まった。
出来る事であれば、入れ替わっている現状、ココアたちとの接触はなるべく避けた方がいいだろう。
だが、そんな可奈美の懸念などいざ知らず、ココアは上の階のハルトを呼びに行こうとする。
「ああっ! 待ってココアちゃん!」
「どうしたの?」
「ハルトさんは今、なんかの作業に集中しているみたいだから! 邪魔しない方がいいと思うよ!」
精一杯、可奈美の声色を真似てみた。だが。
「じゃあ、コーヒーでも持って行ってあげようよ!」
(ありがたいけど逆効果だった〜!)
可奈美は頭を抱えた。
だが、丁度その時呼び鈴が鳴り、ココアが反転した。
「いらっしゃいませ!」
「いらっしゃい!」
「いらっしゃいませ」
ココアに遅れて、可奈美とチノも挨拶する。
入って来たのは、顔に馴染みのある、年の離れた男女の二人組だった。
「こんちわー!」
「ちわー!」
茶色の天然パーマの若い男性と、可奈美やチノと同じ年齢層の少女。他人同士でつるむ機会が少ないであろう二人であるが、二人はまるで兄妹かのように息を合わせた笑顔を見せていた。
その名を、可奈美の体に宿るハルトの精神は、しっかりと理解していた。
「真司……さ
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