第三章
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式が終わってから娘も預けた、娘は布にくるまれたままだった。
そして老人はここで言った。
「家に連れて帰ってからな」
「娘さんとですね」
「会ってくれるかのう、あんたが布を取って」
娘をくるんでいるそれをというのだ。
「そしてだ」
「そのうえで、ですね」
「会ってくれるか」
「わかりました」
ヘロデはここでも誠実に答えた、そのうえで娘を自分の家に入れてもらった。老人が連れて来た者達がそうしてくれた。
そして家に入ってだ、ヘロデは自分の部屋の真ん中に置かれたその布を見て共にいる母に対して話した。
「ではこれからね」
「布を取って」
「妻と会うよ」
「ではね」
「話を聞いていると」
老人のそれをだ。
「手足がなくて」
「身体は丸いわね」
「そうだというけれど」
「妻になるのならね」
「その姿を知らないといけないよ」
「ではね」
「自分が決めたのだから」
こう言ってだった。
彼は自分から布を取った、それで妻と会ったが。
手足がなく丸い身体をしていると聞いたがだった。
嘘の様に整った顔立ちと身体を持ち眩いばかりの光を放つ若い娘がいた、これにはヘロデだけでなくだ。
母も驚いた、それで二人で話した。
「全く違う」
「手足はちゃんとあるし」
「何て奇麗な人なんだ」
「ええ、本当に」
「父からお話は聞いています」
娘は驚いている二人に貞淑な物腰で応えた。
「それではこれからは」
「私と結婚して」
「共に暮らしていいでしょうか」
「喜んで」
これがヘロデの返事だった、娘はイリナといってだった。
ただ美しいだけでなくこの上なく清らかな心でだった。
せっせと働いた、ヘロデも母もそんな彼を心から愛したが。
暫くしてイリナの父である老人アロンという名の彼が来た、そこでヘロデは彼に言われたのだった。
「実はイリナの婿をだ」
「探しておられたのですか」
「そうだった、真面目で誠実な者を」
ヘロデに対して話した。
「そうだった、それで果樹園にじゃ」
「私が来て」
「その話を聞いてだ」
そうしてというのだ。
「お前さんならいいと思ったが」
「そうでしたか」
「試させてもらったのだ」
「さらにですね」
「そしてそれにじゃ」
老人は笑顔で話した。
「見事応えてくれたからな」
「だからですか」
「わしは満足じゃ、お主なら娘を任せられる」
「それではこれからは」
「娘を頼むぞ」
「二人で幸せになります」
ヘロデは生真面目な顔で答えた、そうしてだった。
彼はイリナそれに母、後に生まれる子供達と幸せに暮らしていった。彼は死ぬまで真面目で誠実で信仰心が篤く誰からも批判されることはなかった。その為に彼は幸せになったと誰もが言った。
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