第二部まつりごとの季節
第二十五話 陸軍軍監本部にて
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がたいものだが」
「私は前線送り確定ですよ?それまでに面倒を片付けられるとは思えませんね」
将官相手とは思えない口調であるが、堂賀もそれを全く気に留めずに微笑すら浮かべている。
「だが、その様な事ばかり言っていられないだろう? なあ中佐」
「分かっております、閣下。ですが流石に兵の命を預かっているのに内職はできません
閣下の麾下の者だけでも――」
陸軍には陸軍の情報機関がある。――特設高等憲兵隊と呼称されている。
その名のごとく私服憲兵から発展した情報機関である。情報課の管轄下であり、防諜室が実質的に支配しているのだが――
「無理だ。宮野木に安東、そして守原、将家の手勢が入り込みすぎている。
だからこそ、貴様が知りたい事も耳に入るのだが。その代わり私の動きも耳に入る」
将家の勢力争いの御陰で身動きがとれないのは変わらずだ。それに規模も皇室魔導院どころか水軍の外郭団体である内外情勢調査会にも負けている。導術に至っては魔導院から教官を借り受けている始末である。
「それにな、貴様だけではないのだ、駒城の者は。――駒城にすら知られたく無いから私の所に来たのだろう?」
長く深く陰謀の世界で生き抜いた男の猛禽の如き視線に射抜かれた。
「・・・・・・」
「貴様も大胆だな、鞍替えを考えているのか?」
視線を緩め、唇を再び楽しげに歪める。
「勿論そうならない為でもあります。ですが、万が一、駒城が潰れそうなら、
或いは馬堂家を切り捨てようとするなら――」
――本意ではない、だがその時には極めて遺憾であるが、戦略を変える必要がある
「現状では?」
「私は駒城を主家と仰ぐのは恵まれた事だと考えていますよ。少なくとも主家は国を守ろうとしています」
――馬堂は簡単に切り捨てられない程度には駒州内に深く食い込んでいるが――いや、それでも状況次第では危険だ。馬堂家は今、最も我々にとって不必要な類の力を持ってしまっている、大殿は必要であると判断すれば出る杭を杭ごと切除してしまうだろう。そうで無くては駒城が独立独歩の方針を執りながらこれ程の権勢を維持する事は出来ない。今必要なのは切札を作る土台だ。
かつての部下へ向ける視線を緩め、歴戦の情報将校は口を開いた
「――大掛かりな行動は出来ないが協力しよう。私の子飼いの者ならば信用できるからな。
その代わり、貴様の家が持つ伝手も使わせてもらうぞ。」
「新城直衛と実仁親王殿下ですね?
後は当主様の許可を頂ければ弓月伯とあの方が抑えている衆民官僚閥に蓬羽を含めた衆民の有力者にも何名か」
「上出来だ」
「愉しみですか?」
「あぁ、何とも愉しみだ。後は貴様が私の下に戻ってくれば言う事無しだったが
貴様が一番、この手のことの愉しみ方の覚えがよかったからな」
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