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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十五話 陸軍軍監本部にて
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したいのですが宜しいでしょうか?」

「どちらも構わない。君が剣虎兵に慣れていないのは解っているからな。
それに富成中佐も元々そのつもりだったようだ。
――あぁそれと直衛が場合によっては第十一大隊から何名か引き抜きたいのでそちらは君たちで相談してくれ」
鷹揚に頷いた中将に若き中佐は深々と頭を垂れた


同日 午前第十一刻 陸軍軍監本部 戦務課付近
〈皇国〉陸軍中佐 馬堂豊久

――既存の大隊と馬堂家が出している兵を中心に匪賊の討伐などで実戦を経験した兵が半数を占め、幕僚陣も充実している。士官の数も二百名程度となるだろう。
訓練の優先順位を厳格にすれば三ヶ月――いや、二ヶ月だ。それで、駒州軍の名に恥じぬ部隊になるだろう。
「――と思うがどうかな?」
「取り敢えず、前線送りの道連れにされた恨み言を申して宜しいでしょうか?」
 大辺は静かに溜息をついた。
「連隊本部の人事は一任されていたからね、信頼出来る者を幕僚にしたいのさ。
俺に参謀教育を施したのは少佐だ。その能力は知っているよ、首席幕僚殿。」

「また皇都で要らぬ心配をするよりはましですかね。少なくとも貴方が何をするかを見張ることが出来る」
そう言って溜息をつかれると耳が痛いのか、視線を泳がせながら豊久は言葉を続ける。
「北領では必要だった。あの戦よりはマシであってほしいな。
いや、そうしなければならないな、俺が死地へと連れていく連隊だ」

「――そうですね。それではまた、連隊長殿」
感情の薄い顔に僅かな驚きと喜びの色をよぎらせ、今の職場へと戻っていった。
「宜しく頼むよ。首席幕僚」



同日 午前第十一刻三尺 陸軍軍監本部内情報課 次長執務室
〈皇国〉陸軍中佐 馬堂豊久


「お久しぶりです、堂賀閣下」
「久しいな、馬堂中佐」
久しぶりに会った上司は髪の灰色こそ白の度合が強くなっていたが猛禽類の如く鋭い目に射抜くような光を閃かせ、どこか愉しげに唇を歪めている姿は変わっていなかった。
「それで?あれで早くも釣れたそうだな。魔導院も手が早いものだ」
かつての上官の問いに豊久は口をゆがませて答える
「はい、閣下」
 この男が書いた書面には呼び出しの他はどうでもよい事を大仰に書いていただけであった。それであっさりと魔導院の輩を釣り出すのだから恐ろしいものである。
「連中が何を考えているかは流石に分からん。
だが、馬堂家は執政府にも強く食い込んでいる。貴様の家の当主殿の方が探りやすかろう。
――もしくは君の義父殿か。うむ、まだ違ったな。これは失敬」
そう云って顔を引き攣らせたかつての部下を眺め、にたりと笑う。
「まぁそれに貴官は勅任二等特務魔導官とも顔見知りだろう?
かの無位の英雄殿とはどちらも旧知の仲だ、伝手を作れたらあり
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