第二章
[8]前話
退院してからはすっとその子につきっきりだった、もう何があっても離れないという感じだった。夫はそんな妻を見て言った。
「やっぱり僕達の子供だから」
「可愛いわ、特にね」
「特に?」
「物凄く痛い思いしてだったから」
それでとだ、妻は夫に我が子を見つつ話した。夫の名前は新一となった。
「可愛いのよ」
「ああ、出産で」
「妊娠してから苦しくて」
「それでなんだ」
「そう、それでね」
そのうえでというのだ。
「やっと生まれてくれたから」
「可愛くて仕方ないんだ」
「何でお母さんが自分の子供を大事にするか」
それはというのだ。
「よくわかったわ」
「自分が出産してみて」
「ええ、長い間苦しんでね」
つわりや陣痛にというのだ。
「地獄の様な出産の痛みもあってね」
「それで産むからだね」
「可愛くて仕方ないのよ」
「そういうことだね」
「そうよ、だからね」
夫ににこりと笑って話した。
「この子をこれからもね」
「可愛がっていくね」
「そしてゆくゆくは」
「お寺をね」
「継いでもらいましょう」
夫に笑顔のまま話した、そしてだった。
二人で我が子を愛し育てていった、母親として愛情を忘れず。そして我が子が父の跡を継いで住職になった時に隠居した夫と共に心から喜んだ。生まれる前からのことを思い出して。
出産は地獄だからこそ 完
2022・12・25
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