入れ替わり
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「可奈美さん、どちらへ?」
捕まった。
ココアの妹分(妹じゃありません)であるチノが、すでにラビットハウスの制服を着て先回りしていた。
「どこって、私はここに……」
「あれ? 何でハルトさんが答えてるの?」
「ん? あっ!」
ハルトは慌てて口を抑える。
「えっと……! その、間違えちゃった! あはは……!」
明らかに苦しい言い訳をしている自分の姿に、俺そんな可愛い喋り方しないよ、と心の中で呟きながら、可奈美はココアとチノにどうすれば怪しまれないか考えを巡らせる。
だが。
「そっかあ! たまにあるよね! 可奈美ちゃん、今日はこれから一緒のシフトだね!」
その考えは不要だったようだ。
ココアは可奈美の腕を大きく振りながら、喜びを示している。
苦笑いを浮かべながら、可奈美はココアの手を振りほどく。
「そ、そうだねそれじゃ、お……私は、早く着替えてこないとね!」
「え」
可奈美のその発言に、ハルトは血相を変える。席を飛び出し、可奈美の手を掴んで奥の厨房に連れ込んだ。
「き、着替えって……! ハルトさん、私の体で……!?」
「この際仕方ないよ。なるべく、俺たちはいつも通りにすごさないといけない。どこで二人に様子がおかしいとバレるか分からないからね?」
「う、うん。それは分かってる」
「運が悪いことに、これから可奈美ちゃんはシフト入っていたでしょ? つまり、俺がこれからシフトに入るから、可奈美ちゃんはいつも通りの俺と同じことをやって」
「いつものハルトさんって……」
ハルトが目を泳がせている。近づいた自分の顔と向き合うというのも不思議な気分だと感じながら、可奈美は続けた。
「大丈夫。可奈美ちゃん、人を見る観察眼は本当に凄いから。自信を持って」
「わ、分かったから……」
ハルトはもじもじと体を捻らせている。
可奈美はその理由を察する。
「まあ、可奈美ちゃんの年頃の女の子が、自分の着替えを他人にさせられるっていうのが辛いのは分かるけど、今は緊急事態だからね。俺も目を瞑るようにするから」
「そうじゃなくて……」
「何? あ、俺の行動? 俺、丁度今指輪作っていたところだったんだ。道具とかは全部机の上に置いてあるけど、この際何もしなくていいよ。部屋から出なければ、こっちでココアちゃんたちには作業中って言っておくから」
「だから……その……!」
ハルトは、顔を真っ赤にして切り出した。
「トイレ……行きたい……!」
新年度が始まったばかりのこの日。
肉体的にも精神的にも。
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