魔法使いでありんす
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「ぎゃっははははー!」
下品な笑い声が響きわたる。
見滝原と呼ばれるその街。中央近くのその通りは、平日の昼間ながら、多くの人々が行き交う。
桜が咲き始める季節。暖かいその街を闊歩するのは、人間ではなく怪物だった。
「さあ、絶望するでありんす! そして、新たなファントムを産み出すでありんす!」
そう叫ぶのは、闊歩する異形の怪物。
「このファントム、ブラウニー様がお通りでありんす!」
ブラウニー。
北欧の民間伝承に登場する妖精と同じ名を持つそれは、スキップをしながら、その手に持った槍であちらこちらを破壊していく。自動販売機が真っ二つになり、建物に大きな穴が開いた。
その茶色の体を覆う無数の毛を揺らしながら、ブラウニーは叫んだ。
「さあ、行くでありんす! グール共!」
そうしてブラウニーが放り投げたのは、無数の石。
だが、地面に接触した小石たちは、途端に紫のオーラを纏う。やがて人型になっていくそれら。それぞれが無表情でぎこちない動きをしながら、槍を振り回し、破壊を広めていく。
それはグールと呼ばれる下級ファントムたち。それぞれ角ばった動きで、扇状に広がっていく。
グールたちはそれぞれ町のあらゆる設備を破壊していく彼ら。逃げる人々を眺めながら、ブラウニーは満足げに頷いた。
「さあ! 絶望しファントムを……ぐおっ!」
だが、それ以上の言葉を続ける前に、ブラウニーはバランスを崩した。
頭部に炸裂する火花。それは、ブラウニーだけでなく、グールたちにも例外なく火花を散らしていく。
「な、何でありんす?」
次々に倒れていくグールたちを見て、ブラウニーは目を丸くした。
だが、異変は続く。
雪崩のように倒れていくグールたちに、ブラウニーはあせあせと頭を抱えた。
そして、見た。その正体を。
「何でありんす……これは?」
ブラウニーが拾い上げた、グールを倒した原因。指に挟まるそれは、銀で出来た弾丸だった。
「こんなものが、どこから?」
だが、その言葉と同時に、発砲音が轟いた。
顔を上げれば、確かにどこからか飛んでくる銃弾が、グールたちに命中していっている。それはさらに、生き物のような弾道を見せ、的確にグールの首元に火花を咲かせる。
そしてとうとう、その発生源が現れた。
銀の銃。陽の光を煌びやかに反射するそれは、一瞬ブラウニーの視界を遮った。
現れたのは。
「人間……?」
二十歳前後
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