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俺様勇者と武闘家日記
第2部
ダーマ
再びバハラタへ
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った三人しかいなかったとされている。まあ、有史以前はどうだったか知らないが、少なくとも今の国が存在してからはそのくらいしかいなかったみたいだぜ」
 今まで漠然と考えていたが、三賢者にそんな意味があったなんて知らなかった。数少ない賢者であるイグノーさんの偉大さに、改めて気づかされた。
「なるほど、よくわかりました。色々教えてくれてありがとうございます!」
「あんたらの仲間もいい転職が出来るといいな」
 そう言って手のひらを翻すと、男性は私たちに背を向けて再び手元に置いてあるワインを飲み始めた。
「あの人もルカたちの作る町に行ってくれるといいね」
「ふん。随分調子のいい奴だったけどな」
 カウンターから離れた後、私とユウリはそれぞれの意見を言い交わす。ついでに先ほど気になっていたことを聞いてみた。
「ねえ、なんでさっき自分が勇者だって名乗らなかったの?」
 するとユウリは、不機嫌そうな顔で先程の男性の背中を睨み付けた。
「別に。ただグダグダと喋るあいつが気に入らなかっただけだ」
 そう言うユウリだって、自分のことになると延々と話すじゃない。と言いそうになったが我慢して言葉を飲み込んだ。
「それはそうと、ちょっと気になってたんだけどさ。『勇者』って他の職業と何が違うの?」
 話題を変えて、改めてユウリに問うと、彼は意外そうな顔を向けた。
「なんだ、そんなに気になるのか」
 いつもの仏頂面ではあるが、どことなく嬉しそうな口調で彼は答えた。
「一番わかりやすいのは呪文だな。例えば『ラリホー』なんかは魔法使いも使えるが、『アストロン』や『ライデイン』は勇者である俺にしか使えない」
「へえ……。つまり勇者専用の呪文があるんだね」
「しかもそれらの呪文は威力の高いものが多いから、扱いが難しい。俺自身、呪文は随分前に覚えたが、使いこなせるようになったのはごく最近だ」
「そうだったんだ。じゃあ使いこなすようになるまで、ずっと努力してきたんだね」
 ユウリが口先だけでなく、実は相当な努力家だと言うことは本人の口から聞いていたので知っている。なので素直に感心したのだが、なぜかユウリは拗ねたように視線を逸らした。
「好きで努力した訳じゃない。死に物狂いでレベルを上げたり、呪文を使いこなすようになったのも、『勇者』の肩書きに拘るジジイを見返すためにやったことだ」
「えーと、ユウリのお祖父さんのことだよね」
 確か幼いユウリを一人山の中に置いたり、海で魔物退治をさせたりしたんだっけ。改めて思うとすごい人だな。ユウリのお祖父さんって。
 けど、ユウリの話を聞いていると、ユウリのお祖父さんは彼を『孫』としてではなく『勇者』としてしか見ていなかったのではないかと感じてしまう。そんな環境の中で育てられたユウリは、いったいどんな気持ちだったんだろう。
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