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俺様勇者と武闘家日記
第2部
ダーマ
再びバハラタへ
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てきたらしい。魔王を倒そうとする人たちが少なくなった今では、わざわざ山奥まで来て転職を望む者は随分減っているそうだ。
 空いている席に座ろうと辺りを見回していると、隅のカウンターでワインを飲んでいた一人の戦士が、私たちに気づいて声をかけてきた。
「よう。あんたらも転職しに来たのか? このご時世にこんなところに足を運ぶなんて、奇特な奴らだな」
 おそらくアルヴィスと同年代だろうか。髭面で、顔のあちこちに傷がある男性だ。赤ら顔なのはきっと、ワインを飲んでいたからだろう。ユウリは彼の方を振り向くなり、お酒の匂いが気に入らなかったのか、しかめっ面をした。
「昼間っから酒をあおっている奴に言われたくないな」
「まあそう言うなって。おれもな、こんなナリだがついさっき、商人に転職したんだよ」
「へえ、商人ですか!?」
 身内に商人がいるせいか、つい反応してしまう私。
「ああ。もともと旅商人を護衛する戦士として、各国を渡り歩いてきたんだがな。最近あちこちの国で入国規制が打ち出されただろ? そしたら旅をする商人がいなくなっちまって、商売あがったりになってさ。だったらひとところに留まって商売でもやってた方が儲かると思って、商人になったのさ」
「そうなんですか。戦える商人なんて、なんだかかっこいいですね」
 私が素直に感想を言うと、男性は赤ら顔をさらに赤くして照れ始めた。
「へへ。故郷で待ってる人もいるからよ。心機一転してがんばるつもりさ」
 ん、待てよ、この人……。
「あの、どこで商売をするかとか、考えてます?」
「あ? いや、別に……。急だったからな。まだ何も考えてないんだ」
「だったら、ちょうどいい場所を知ってるんですけど、よかったら教えましょうか?」
「本当か?」
 私はユウリから世界地図を借り、ルカたちがいる場所を指で指し示し男性に教えた。さすがに今日明日で行ける距離ではないが、もし行ける機会があったら行ってみる、と男性は答えてくれた。
「ありがとな、嬢ちゃん。礼と言ってはなんだが、おれがここで聞いた転職についての話でも聞くかい?」
「はい、是非聞きたいです!」
『転職』という言葉に、シーラに関係する話ならばと私は目を輝かせた。
「あんたは見たところ武闘家のようだが、何か他の職業に転職するのか?」
「いえ、私たちはただ旅の途中で立ち寄っただけなので……。けどしばらく会わなかった仲間が転職するかもしれないんです」
「そうか。転職するにも適正かそうでないかがあるからな。生まれ持った職業でもない限りは」
「生まれ持った職業?」
 私が理解できない顔をしていると、親切にも男性は説明してくれた。
「ああ。例えばほとんどの人は、成長していく間に色んな知識や経験を身につけていくうちに、段々と自分はこうなりたい、と自分で決めるようにな
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