暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
GX編
第137話:踏み出す勇気
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洸は飽く迄生存者の父であり、バッシングしたい連中からすればそこまで重要な存在ではない。居れば叩くが、居なくなった相手を探してまで叩くよりはその場に残っている張本人の響とその家族にのみ矛先が向くのはある意味当然の事であった。

 洸は今更ながら、自分が今まで平穏に過ごせていたのは置いて来た家族が全ての悪意を引き受けていたからだと気付いた。

「あの、お父さん?」
「どうした、響?」
「本当に、お母さんとやり直すつもり?」

 響からの問い掛けに、洸は即答しなかった。言い淀むように口を動かし、組んだ両手で口元を隠した。

「……勿論、俺だってやり直したいと思ってる」
「だったら。始めの一歩は、お父さんから踏み出して。逃げ出したのはお父さんなんだよ? それなら、戻ってくるのも、お父さんからじゃないと」

 真っ直ぐ向けられる響からの視線に、洸は思わず目を逸らしてしまった。自分から動き出すべきだと言うのは、他ならぬ洸自身が分かっている。だが、その一歩には、とてつもない勇気を必要としたのだ。

「分かってる……俺だって分かってるんだ。あの後、色々と考えた。俺は響の父親として相応しいのかどうか。このまま戻って良いのかどうか」
「それなら……」
「だが、怖いんだよ。怖くて、足が竦むんだ。1人で行って、にべも無く拒絶されたらどうしようって」

 その恐怖を、響に口添えしてもらう事で紛らわせようと言うのが今までの洸の考えであった。娘の背中に隠れながら復縁を迫るなど、父として、一家の大黒柱として情けないにも程がある。

 結局、ここに居るのは父ではなくただの負け犬であった事を理解してしまい、響は俯き涙を堪えた。

 しかし…………

「でも、それじゃあダメなんだよな?」
「え?」
「響の背中に隠れてるようじゃ、俺は響の父親ですら居られないんだよな」

 名も知らぬ男から言われた。子は父の背を見て育つものであると。その父が、この背に隠れている様では父と名乗る資格すらない。

「実はあの後、どこの誰とも分からない人に言われたんだ。俺は父親失格だ、この前に立てない俺に父としての資格はないってな」

 洸の独白を、響は黙って聞いていた。どこの誰とも知らない誰かが気になるが、そんなのはどうでもいい。
 ここに来た時の洸の雰囲気が先日と違っていたのは、それが原因だと響も理解した。そして、洸が恐怖の鎖を自らの力で引き千切ろうとしている事にも気付いた。

「正直、怖いのは変わらない。だが、このまま情けない父親失格の男として響に思われ続けるのも、同じくらい怖い。だったら、せめて一歩だけ……ほんの一歩だけでも、頑張ってみようって……」
「お父さん……!」

 ここに来て響は初めて笑みを浮かべた。響の目に映る洸の姿が、情け
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