第二章
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「信長さんも子沢山であったがな」
「あの人そっちの趣味でも有名だよな」
「他には蒲生氏郷さんや森蘭丸さんとであった」
「当時誰も何も言わなかったあ」
「もっと言えば江戸幕府二代将軍秀忠さんはじゃ」
徳川秀忠である、非常に真面目で律儀な人物だったという。
「奥さん一筋であったが」
「一回だけ浮気して子供出来たよな」
「会津藩の松平正之さんじゃな」
「そうだったな」
「しかし基本奥さん一筋でじゃ」
江戸幕府の将軍はおろか大名でも珍しい一夫一妻の人物であった。
「それと同時にじゃ」
「秀忠さんもかよ」
「愛人さんがおったのじゃ」
同性のというのだ。
「その人を庇う様な行いもあった」
「それで奥さん何も言わなかったんだな」
「そうであった」
大坂城の事実上の主であった淀殿の末の妹であるお江の方である、長姉と比べるとかなり大人しい性格だったという。
「一切な」
「つまり同性愛は別か」
「そうじゃ、わしはこれまで婆さん以外のおなごと床を共にしたことはないぞ」
「一度もか」
「そうしたことを言われても断ってきた」
頑として、そうした返事だった。
「そうしてきた」
「それで男はとか」
「そういうことじゃ、何か悪いか」
「いや、祖母ちゃんがそれで納得してるんだな」
「だから五十年一緒におる」
そうだというのだ。
「そういうことじゃ」
「それに法律にも触れてないか」
「我が国で同性愛で捕まった者はおるか」
「それ自体でだな」
「そうじゃ、一人もおらん」
それこそ一人もだ。
「このことを日記に書いてもな」
「捕まってないんだな」
「それ自体ではな」
「それが日本なんだな」
「そうじゃ、だからわしはあくまで言う」
「祖母ちゃん一筋か」
「永遠にな」
こう言ってだった。
彦次郎は妻を愛しかつ多くの愛人達とも楽しい日々を過ごしていた、その愛人達はどういった者達かというと。
実篤の父で彦次郎の息子である一雄父親の血をそのまま受け継いだ感じだが実篤にその遺伝を与えているのがわかる顔で一七五程の背の彼が家で笑って話した。
「さっき二メートル位の筋肉モリモリの黒人の人が来てたな」
「お義父さんのね」
妻で実篤の母の徳子が応えた、面長でおかめ系の顔で黒髪を長く伸ばし後ろで束ねている。背は一五三位でスタイルは崩れていない。
「そうなの」
「ああ、今五人いるっていう」
「その人よ」
「親父に呼ばれたんだな」
「そうなのよ」
夫婦で家で穏やかに話す。
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