第四章
[8]前話
「それでね」
「ボディコンも着なくなったの」
「そうなったのよ、それで結婚して仕事も続けていたから」
そうしていてというのだ。
「尚更忙しくなってバブルも終わって」
「ジュリアナとかもなくなってね」
俊彦も言ってきた。
「ボディコンも時代遅れになって」
「余計に着なくなったわね」
「そうだったね」
「あんたもできたしね」
日夏に顔を向けて話した。
「それでもうね」
「ボディコンを全く着なくなったの」
「結婚して子供ができてイケイケもないわよ」
バブルの頃の言葉も出した。
「だからね」
「あれっ、今は?」
「着ないわ」
今度は明るく笑っていた、そのうえで日夏に話した。
「五十過ぎて着る服じゃないわよ」
「まだスタイルいいのに」
「スタイルの問題じゃなくて若いから、その時代だから着られる服もあるのよ」
「それがボディコンなの」
「ボディコンもね、だからね」
それでというのだ。
「もう着ないわ、着るのは貴女になるわ」
「そうなのね、私は別にいいわ」
若き日の母の写真を見つつ答えた。
「こうした服はね」
「いいのね」
「いいわ、ミニスカはよくても」
それでもというのだ。
「こうした服は趣味じゃないから」
「そうなのね」
「だからいいわ、気持ちだけ受け取っておくわ」
「それじゃあね」
「ええ、ただお母さんの若い頃のこともっと聞かせてくれる?」
「いいわよ」
玲子は日夏に笑顔で応えてだった。
そうして夫と共に娘にあの時代のことを話していった、日夏はその話を目を輝かせて聞いた。それは彼女にとっては知らない過去の楽しい話であった。
そして家に帰ってから言うのだった。
「私も結婚して子供が出来たら今の私のことお母さんみたいに話すのかしら」
「そうなるでしょうね」
玲子も否定せずに答えた。
「そうしたものだからね」
「流行は」
「ええ、お母さんみたいに話すわ」
「そうなるのね」
「そうよ、その時はよく話してあげてね」
「そうするわ」
母の言葉に頷いた、そうなることは実感出来なかったが母を見ると頷けた。そう話してくれた彼女を見て。
ボディコン傷 完
2022・6・12
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