第2部
ダーマ
シーラの試練・後編
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鬱陶しそうにナギちんは文句を言うが、文句を言いたいのはこっちの方だ。鈍感なナギちんにはわからないだろうけど、スライムメンタルのあたしには心の準備が必要なのだ。
「ナギちん、素早さ上げるから、無傷で着地できるようにして!!」
「? あ、ああ、わかった!!」
ナギちんが了承する前に、あたしは気持ちを集中させる。呪文を発動させるには、魔力はもちろんのこと、平常心と集中力が必要不可欠なのである。
「ピオリム!!」
僅かなMPを使い、ナギちんに向かって素早さを増幅させる呪文を唱える。途端、仄白い光がナギちんを包み込む。外見は変わらないが、身体能力は激変したはずだ。
「やべえ、周りの動きが止まって見えるぜ!!」
初めてのピオリムに、なぜかはしゃぎ出すナギちん。その様子に、あたしはしびれを切らす。
「いいから無事に着地して!!」
そうこうしている間に、どんどん地面が近づいてくる。あそこは何階なんだろうか? ,
?どちらにしろ、この高さで地面に叩きつけられたら怪我どころじゃ済まされない。お願い、早くして、ナギちん!!
「はっ!!」
なぜかナギちんは眼前に迫る地面に向かってチェーンクロスを放った。いや、地面ではなく、あたしたちより先に落ちていくさっきの魔物を狙っていた。そして、チェーンクロスの鎖が魔物に絡まると、そのままナギちんは魔物を塔の壁に打ちつけた。魔物は壁に埋め込まれ、チェーンクロスを手にしているナギちんと私は、そのまま宙ぶらりんになる。
ナギちんは魔物ごと壁に埋め込まれたチェーンクロスの錘を器用に自分のもとへと引き寄せると、すぐさま地面に着地した。
「くぅぅ……! このくらいの高さでも結構足がしびれるぜ」
若干涙目になりながらも、あたしの願い通りほぼ無傷で着地したナギちんに、あたしは拍手を送った。
「すごーい、ナギちん!! やれば出来るじゃん!!」
「お前な……」
脱力した様子で、ゆっくりとあたしを下ろすナギちん。今ので疲れちゃったのかな?
とりあえず、なんとか下の階にたどり着くことは出来たけど、辺りを見回してもだだっ広い部屋には何も置いていなかった。それどころか、床にはあちこちに無数の穴が空いている。
「なんだよ、結局何もないじゃんか」
がっくりと、肩を落とすナギちん。だけどあたしは、ここがハズレだとはどうしても思えなかった。
「ナギちん、今ここが何階かわかる?」
「ああ、調べてみるよ」
そう言うとナギちんは、あたしがさっきピオリムを唱えたように精神を集中させた。
「フローミ!!」
ナギちんが叫んだその呪文は、盗賊だけが習得できる特別な呪文だ。発動するとダンジョンや塔などにいるとき、自分が何階にいるかを知ることが出来る。……正直自分が今いる場所なんて歩いてりゃわかるじゃん、と思っていたけ
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