第2部
ダーマ
シーラの試練・後編
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見そうになるが、瞬時に目を瞑る。
「いや、目を瞑ってたら渡れないだろ」
あああ、もう、うっさい!! 外野は黙ってて!!
あたしは意識を集中し、四つん這いになりながらゆっくりとロープを渡る。幸いロープは太くて固く、人二人が乗っても多少揺れただけで切れるようなことはなかった。
それでも進むごとにロープは揺れ動き、あたしの身体は左右に揺さぶられる。体が傾くたびにあたしは悲鳴を上げそうになるが、すぐに前にいるナギちんに目を向けるようにした。その平然としているナギちんの姿に何度も勇気をもらいながら、あたしはなんとか彼のすぐそばまで近づくことができた。
「あと少しだぞ、頑張れ!」
ナギちんの声掛けに、自然と進むスピードが速まる。あともう少し、そう思った時だった。
突然遠くの方から羽根の羽ばたく音が聞こえた。気のせいだと思いながらも、あたしは恐る恐る音のする方へと顔を向ける。
「振り向くな、伏せろ!!」
あたしが即座に頭を伏せるのと、ナギちんがチェーンクロスを音のする方に放ったのは、ほぼ同時だった。
『ギャアアアアアッッ!!』
バシッ! という大きな衝撃音の後に聞こえた鳴き声は、この塔で何度も聞いたことのある蝶の姿をした魔物だった。ナギちんの攻撃を食らったその魔物は、断末魔と共にあっけなく真下へと落ちていく。
けれど、その一撃でロープは大きく撓み、余裕でロープの上に立っていたナギちんのバランスが崩れた。
「ナギちん!!」
思わずあたしは宙に浮くナギちんに向かって手を伸ばす。だが、この時あたしは気づかなかった。自分の身も乗り出しすぎていたことに。
「きゃあっ!?」
案の定、全体重を片手で支えきれなかったあたしの手は、耐えきれずロープから離れてしまう。それがどういう結果になってしまうのかは、誰が見ても明白だった。
「シーラ!!」
ナギちんの長い腕があたしの身体を引き寄せると、あたしたちも魔物と同じように落下していく。けれど、咄嗟にナギちんはもう片方の手で着ているジャケットの裏ポケットに手を突っ込むと、鉤付きの細い縄を取り出した。そしてそのまま鉤を振り回し、頭上にある塔のロープに向かって勢いよく放り投げた。
「やった!!」
あたしが歓声を上げるより早く、鉤はロープに引っ掛かった。ナギちんは片方の手であたしを抱き抱え、もう片方の手で縄を握りしめている。いくら力のあるナギちんでも、あたしを抱えながらぶら下がっていられるのは時間の問題だ。
「あーもう無理。このまま下に落ちるぞ」
「えっ!? ちょっと待っ……」
制止する暇もなく、ナギちんはあっさりと縄から手を離したではないか。
「いやあああああああっっ!!」
まるで奈落の底に落ちていくかのように、あたしは絶叫を上げた。
「耳元ででっけえ声出すなよ!」
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