第二章
[8]前話
二人共ボールを取ってその中の水を飲もうと思ったがそれぞれもう前にコップの水があったので不思議に思って言った。
「あれっ、もうあるよ」
「お水あるわ」
「どっちを飲めばいいのかな」
「どっちもかしら」
「ああ、コップの水を飲むんだ」
父は戸惑った二人に微笑んで話した。
「丸いのにあるお水は手を洗うものなんだ」
「手を洗うの」
「この丸いのにあるお水では」
「そうだ、これはフィンガーボールっていうんだ」
子供達にその水とそれを入れている容器の話をした。
「食べる前に手を洗う為にあるんだ」
「昔はあちらでは手で食べていたのよ」
妻は欧州のかつての食文化の話をした。
「フォークやナイフを使う前はね」
「そうだったんだ」
「昔は手で食べていたの」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「食べる前に手を洗って綺麗にしていたのよ」
「僕達いつも食べる前にお父さんとお母さんに手を洗いなさいって言われるけれど」
「それと一緒なのね」
「ええ、お箸を使う時にもそうするけれど」
母は今の日本の話もした。
「昔はあちらは手で直接食べていたからよ」
「お箸を使う時よりも奇麗にしていて」
「それでなのね」
「そうよ、じゃあ今からね」
「皆で手を洗おうな」
父が言ってだった。
一家でフィんがーボールで手を奇麗に洗ってだった。
コースを楽しんだ、サラダからスープ、オードブルにメインディッシュそれにデザートと続くそれは流石に美味かった。だが。
父は店を出てから自分の妻にこう話した。
「やっぱり僕達にはね」
「こうしたお店は合わないわね」
妻も応えた、それも笑って。
「ラーメン屋や回転寿司の方がいいわね」
「ハンバーガーとかピザとか」
「そうよね」
「そっちの方がいいね」
「ううん、凄く美味しかったけれど」
「何か違うね」
子供達もこう話していた。
「僕お家で食べるハンバーグの方がいい」
「私海老フライ」
「ああいうので手を洗うよりね」
「おしぼりの方がいいわよね」
こんな話をして家に帰った、そして一家のどの者もフィンガーボールが出る様な店に行くことは滅多になかった。誰もがそんな店は性に合わないと言った。
フィンガーボールを見て 完
2022・11・23
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