第一章
[2]次話
ぐれた夫
サラリーマンの江田孔明は大人しい顔に地味な七三分けの髪の毛に一七〇程の中肉のスタイルで趣味は読書と自分と妻の真礼子供と遊ぶことに入浴だ。至って真面目な人間である。
だがある日だ、彼は妻に言った。
「僕ぐれようと思うんだ」
「えっ、ぐれるって?」
「だから不良になろうと思うんだ」
一五五程の背で色白で黒髪を肩の長さで切り揃えた細い目と波立った感じの口元の妻に話した。妻の仕事は不動産会社の事務員である。
「これからね」
「不良って」
「いや、何か思うところあって」
それでとだ、夫はさらに話した。
「これまで真面目に生きてきたけれど」
「不良になるの」
「お仕事は続けるけれどね」
それでもというのだ。
「不良になるよ」
「それで何するの?」
妻は夫に怪訝な顔で尋ねた。
「不良になって」
「いや、だからバイクに乗ってね」
「あなた自動車免許だけでしょ」
持ってる免許はというのだ。
「あと犯罪はしないでしょ」
「犯罪なんて論外だよ」
「じゃあ何するのよ」
「まあこれから見てね」
これが夫の返事だった、自宅でこう言うのだった。
「不良になった僕を」
「とりあえずね」
真礼は訳がわからないまま頷いた、そうしてだった。
夫を見ると朝起きるとリーゼントになっていた、そのうえで妻に言った。
「全開バリバリだから、これで会社行くよ」
「リーゼントにしたの」
「うん、これでスーツ着てね」
そうしてというのだ。
「ロック聴きつつ会社に行くよ」
「そうなのね、何かね」
妻はリーゼント姿の夫を見て言った。
「似合ってないわよ」
「そうかな」
「凄い違和感あるわ」
そのリーゼントを見て言うのだった。
「どうもね」
「そうなんだ」
「ええ、ちょっとね」
「お父さん何か変」
二人の息子である大輔も言って来た、父親そっくりの顔で今四歳だ。
「変な頭」
「お父さん不良になったんだ」
「何それ」
息子はそう言われてもわからなかった。
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