暁 〜小説投稿サイト〜
東方project 秋姉妹 〜人恋し神様〜
東方project 秋姉妹 〜人恋し神様〜
[8/11]

[1] [9] 最後 最初
来ない。何かしようにも穣子がこの様子では・・・・

振り返った時、そこに穣子の姿はいなかった。
 
「まさか・・・・・・! 」

私は力を振り絞り夜の森の上を飛んだ。
何度も何度も落ちそうになったが、それどころではなかった。
妹は恐らく人里へ向かったのだろう。
・・・・今の状態では何をするにしても穣子自身が危ない。

「早く・・・早く・・・・」

村に到着すると農民が外で騒いでいた。

「奇跡じゃ・・・・」

気づかれないように近づいてみる。ふと見ると、水田の稲が蘇っている。
畑にも大きく野菜が実っていた。
近くに行くと、沢山実っている稲からはいつも一緒にいた、懐かしい大地の甘い香りがした。

あの子の匂いがする・・・。

稲は満月に照らされ、輝くように美しく秋の風になびいている。あの子の髪のようだった。
だけど、もうここには妹の気配はない。

もう・・・どこにも居ないのだ。

「そっか。あの子、最後の力で実らせたのね・・・。豊穣をもたらすために・・・。人々の飢えを・・・満たすために・・・。あなたは本当に人が大好きだったのね。自分の命にかえても守りたかったのね」

あの農村はもう大丈夫だろう。
また家族が笑って暮らせる村に、きっと戻るのだろう。
あの子が人間の為に使った命のしずくが、作物をこんなにも豊かに実らせているのだから。

私は山へ戻っていた。
しかし、いつも隣で寝ていた妹の姿はない。

私の唯一の家族はもう二度と戻って来ないのだろう。
もう一緒に寝ることもない。
一人で横になり、目を閉ざした。
私は妹の姿を何度も何度も繰り返し思い出していた。
何年も何年も一緒に居た妹。ずっとずっと一緒にいるものだ、そう思っていた。
沢山喧嘩もした。罵り合った。声を荒げ叱ることもあった。
でも、本当に大好きだった。妹がいることが当たり前だと思っていた。
離れることなど考えもしなかった。思い返すと、幸せだったと思う。
でも今はもう・・・見ることさえ出来ないのだ。
ふと隣を見ると、いつも穣子が寝ている場所に小さな木が生えている。
甘い香り。これはあの子が言っていた葡萄の木なのかもしれない。

何かが弾けたように涙が溢れ出した。

私は我慢出来ず泣いた。何日も何日も。

・・・穣子・・・・会いたいよ・・・いなくなっちゃ嫌だよ・・・。

下の紅葉が濡れていた。頬が冷たい。

・・・もう冬なのね・・・。

私はゆっくりと眠りについた。もう目を開けたくない。
開ければそこには穣子はもういない。一緒に過ごしていた空間が、ただあるだけなのだ。
一度開けてしまうと、現実を受け入れなければいけない。
それがたまらなく、嫌なのだ。
私は最後の力を使って紅葉に力を与え
[1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ