第2部
ダーマ
シーラの試練・前編(シーラ視点)
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けど、バハラタでミオちんが変態筋肉男に襲われたとき、あたしの気持ちは完全に固まった。
ナギちんに相談したら、最初は反対されたけど、あたしが頑張って説得したら、理解してくれた。それだけじゃなく、あたしと一緒についてきてくれるって言ってくれて、あたしはそれが本当に嬉しかったんだ。
だけど、そもそもあたしは僧侶には向いてないんじゃないか、と思うことが度々あった。
昔ノールや他の僧侶とともに修行を受けたときも、同年代の他の子よりも習得するのに時間がかかっていた。いつのまにかレベルはあたしより年下の子にまで抜かされるようになり、覚えた呪文の数も他の子より少なかった。
そんな中、母様が弟のマーリンを産んだことにより、周囲の考えは徐々に変わっていった。
マーリンが五歳のとき、彼は誰かに教わることなく、独学でホイミを覚えた。そのときの父様の反応は、まるで亡くなったお祖父様の生まれ変わりかと思うくらい感激していた。と同時に、父様の関心は明らかにあたしからマーリンへと移っていった。
そんな天才が隣にいれば、自ずとあたしの自尊心は崩れていく。幼い頃次期大僧正と褒め称されたのが嘘のように、周りの大人も次第にあたしから離れていった。
そしてあたしが十二歳のとき、事件は起きた。
いつまで経っても新しい僧侶の呪文を覚えないあたしに苛立った父様は、ついに手を上げた。今でも父様に叩かれた頬の痛みを覚えている。そしてそのあとに言われた言葉も、未だに忘れられない。
「お前は我が一族の面汚しだ!!」
その瞬間、今まで辛い修行や罵倒に耐えてきたあたしの心の糸はぷつんと切れた。
あたしは一体今まで、何のために僧侶の修行をしてきたのだろう。そんな負の感情がいっぺんに押し寄せてきて、奔流となって渦巻いた。
その後の事はよく覚えていない。他の僧侶たちからも散々色々なことを言われたが、心を閉ざしたあたしの耳には届かなかった。そして当て付けのように父様に頼み込み、無理やり遊び人に転職したんだ。
そのままダーマを出ようとしたとき、まだ幼いマーリンと目があったことだけは覚えている。まるで汚物でも見るかのようなその視線に、あたしはまだ幼いマーリンに別れの挨拶をすることもなく、そのまま神殿の門を開けた。
そして二度と戻らないと誓ったあと、着の身着のままアッサラームに辿り着いたあたしは、半年ほどホームレス生活をしていた。その間人には言えないようなこともしたし、色々な目にも遭った。
そんな中、ボロ雑巾のようなあたしを拾ってくれたのがアルヴィスだ。彼とともに生活し、冷え固まっていたあたしの心はゆっくりと溶かされていった。さらに、彼と一緒の職場にいたビビアンとの出会いがあたしの人生を変えた。アッサラームでの新しい生活は苦しいこともあったけど、それよりも新鮮で楽しいことの
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