六十五 紅き空
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「───アレは“天使”様ですよ」
湿った雨風に煽られて揺れる折り紙。
方々の軒先にぶら下がる妙な飾りについて、立ち寄った店で聞いたところ、冒頭の返事が返ってきた。
天使様の折り紙を店先に飾るとご利益があるという噂なのだ、と説明する店員に、自来也は表向き関心を示したかのような表情を浮かべた。内心、怪訝に思う。
(…どういうことだ)
潜入した雨隠れの里。
大国である火の国・風の国・土の国に囲まれた小国であるが故に、大国の戦場として常に争いが絶えないとされている。
しかしながら里内を見る限り、平和そのものだ。
それとなく聞いて回ったが、雨隠れの里に戦がなくなったのは“ペイン”様のおかげだ、と里人は皆、口を揃える。
山椒魚の半蔵が里の長だと思っていたのだが、半蔵のことを聞けば、どこからともなく視線を感じた。
道行く人々が足を止めて、自来也をじっと見つめている。
それは見かけない顔だからだとか、物珍しさから立ち止まったわけではなさそうだった。
粘りつくような視線を一身に浴びて居心地の悪さを感じた自来也は、何事もなかったかのように話を切り上げる。
刺すような視線はしばらく自来也に纏わりついたが、やがて途切れた。
半蔵の名前を口にしてから明らかに空気が変わったと、自来也は思案する。
山椒魚の半蔵を雨隠れの里の表舞台から消すなんざ困難だ。
若き日に一度、闘った相手だからこそ、半蔵の強さは思い知っている。
なんせ、自来也・大蛇丸・綱手を『木ノ葉の三忍』と名付けたのは半蔵自身なのだ。
その半蔵が統治していたはずの里が、今は“ペイン”という得体の知れない存在が治めているらしい。
既に陽は傾こうとしていた。喧騒もなく人気も少ない。
ただ、寂し気な雨音が満ちる街並みは薄暮の中に溶け込み始めている。
見れば、方々の軒先に妙なものがぶら下がっている。
一つ家の軒先に下げられている人形の群の意図がわからずに立ち寄った店で問えば、今度は“天使”様だと言う。
山椒魚の半蔵が消え、入れ代わりのように里人が崇める“ペイン”様と、奇妙なおまじないである“天使”様。
薄ら寒い思いで雨隠れの里を見渡した自来也は、更に情報を得ようと、フードを目深に被る。
焦らずじっくり探りを入れようと慎重な心持ちで歩き出した自来也は、すれ違った男女に眼を疑った。
気づかないふりをして暫く歩みを進めてから、自然な雰囲気を装って振り返る。
間違いない。
(よもや、こんな所で出くわすとはな…)
綱手の弟子であり、そして自分の弟子である波風ナルと仲良しだったが、甘言に惑わされ大蛇丸の下へついてしまった───アマル。
そして…ナルと同じ
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