第2部
ダーマ
シーラの転職・後編
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ただ一人。それでどうやって僧侶になるつもりなんだ?」
「それは……」
言われてシーラは口ごもる。それに関してはオレも二の句が継げない。ここへ来て、転職できる可能性がゼロになってしまったのだから。
「ああ、なんて憐れなんだろうな。そんな人間以下の姉上に、取っておきの情報があるんだが、一応聞いておくか?」
「けっ、そう言ってどうせシーラを突き落とすようなことを言うんだろ? 悪いがあんたたちの言葉は信用できない」
年下だからって遠慮はしない。何が次期大僧正だ。今の大僧正も大概だが、未来の大僧正がこんなんじゃ、きっとダーマはこれから大変なことになるだろう。
「信じるかどうかは姉上次第さ。いいかい、ここから少し離れた場所に、『ガルナの塔』という修行場があるのは知っているだろう? そこには我が偉大なる祖父イグノーが書き記したとされる『悟りの書』が眠っているらしい。それがあれば、誰でも賢者になれるという。それを持ち帰ることが出来れば、きっと父上も姉上のことを認めてくれるんじゃないか?」
「ガルナの塔……」
シーラは反芻するように呟いた。てか、『賢者』って何なんだ?
「行こう、ナギちん」
さっきまで頼りない声を上げていたシーラが、決意に満ちた目でこっちを振り向いた。
「お、おう?」
いったいこいつにどんな心境の変化があったのかはわからない。だが、マーリンの言葉に思い当たる節があったんだというのがわかる。どのみちこのままじゃお手上げ状態なのだ。ここはシーラに従うしかない。
「ていうか、いい加減離せよ、お前ら。自分で歩けるっつーの」
オレは僧侶どもを振り払い、同じく振りほどこうとしているシーラの手を引っ張った。そしてマーリンたちの方をちらりと振り向いた。
マーリンは薄笑いを浮かべながら、歩いていくオレたちの姿を見送っている。口では姉を救うようなことを言ってはいたが、絶対何か裏がある。
けど、シーラに心当たりがあると言うのなら、オレはそれに従うしかない。
オレは新たな希望と不安を胸に秘め、シーラと共にガルナの塔を目指すのだった。
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