第三十五章 あなたの作る世界なら
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いる魔法使いと戦っていた時に、死を覚悟した彼女から手渡されたものだ。
何故、幼馴染の文前久子ではなく、自分に託したのか? 他校だから頻繁に会っていたわけでもなく、なおかつ会えば喧嘩ばかりしていた仲だというのに。
まあ、おそらくは喧嘩ばかりしていた仲だからなのだろう。
そんなことを考えながらカズミは、形見のオシャレメガネを額に掛けた。
「ふざけているのか?」
「油断させるつもりなら無駄だ」
ツヴァイとアインスが、無表情のままカズミへと歩み寄りながら、白い光の剣を振り上げた。
と、その瞬間、カズミの身体がゆらり揺れる。すすっと足が動いて、二人の間へと素早く入り込んでいた。
「鉄山靠」
ばう、
低く震える音と共に、ツヴァイが背中を強く弾かれたようによろけ、足をもつれさせて倒れた。
鉄山靠とは、中国拳法の技である。
背中を使っての、体当たりだ。
ツヴァイだけでなく、ほとんど同時にアインスも倒れていた。カズミが、鉄山靠を放った直後に素早く屈んで足を払ったのである。
ふう、
カズミは、ゆらゆら揺れる白い輝きに全身を包まれながら、息を吐いた。
この白い輝きは、自分の体内に負荷分散のため埋め込まれていた、アサキの魔力が溢れ出たものだ。
さらに、万延子が以前に見せた爆発呼吸を見様見真似て自分なりにパワーアップさせたものだ。
中国拳法の技など一度も練習したことないが、延子のオシャレメガネを掛けていたらなんだか出来そうな気がして。
それよりなにより、なんだかんだと腐れ縁だった延子と一緒に戦いたくて。
一息をつく暇は、本当にため息の一息分だけしかなかった。
背後からツヴァイが静かに走り寄って、白い光の剣をカズミの背へと振り下ろしたのである。
ただし、アサキのパワーを発動させているカズミには通じなかったが。
振り返りながらカズミは、左手の甲で剣を弾いていた。
そして、
「カズミパアアアアンチ!」
叫びながら右腕を突き出すと、拳がツヴァイの腹の中にめり込んでいた。
8
カズミの拳がツヴァイの腹へめり込んで、どおん、と重たい音と共に振動の衝撃波が拡散するが、さらにその瞬間、どおん、もう一発。今度は左の拳がめり込んで、振動衝撃音に厚みを加えた。
さらに一発もう一発、とカズミは重たい拳をツヴァイの身体へと叩き込む。
殴り続けているうちに、奏でる音が変わっていた。
衝撃の重たさはそのままバキリボキリと骨の砕ける音が加わっていた。肉が潰れて裂ける音が加わっていた。
ツヴァイの身体が潰れている? 砕けている? それもあるが、それだけではなかった。
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