第三十五章 あなたの作る世界なら
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奇襲だろうとも致命傷など与えられようはずもなく、その奇襲を凌がれてしまってはもう打つ手がなかった。
アインスの右手から放たれた真っ白な光球が、カズミの身体を突き抜けた。
細胞崩壊の激痛に、ぐ、と呻いた瞬間、ドライとツヴァイの白い光の剣が、カズミの胸から、背から、打ち下ろされる。
青い魔道着を切り裂かれたカズミは、白目を剥いて膝を落とし、地に崩れた。
「他愛もない」
「まあ、無駄ではなかったが。微々たるものではあったが」
「では合流し、今度こそ令堂和咲を……」
黒服の三人は、倒れているカズミへと背を向け歩き始めた。
「合流して、アサキを、なんだって?」
三人の背後に、カズミが立っていた。
ズタズタに切り裂かれた青い魔道着から覗く胸や腹の切り傷から、じくじくと血を滲ませながら。
「てめえらが、黒だか白だかに、自分から取り込まれてやってチンケなパワーアップをして、今度こそアサキを殺すってか?」
がくり、カズミの膝が崩れ掛けるが、なんとかこらえ踏ん張って、ナイフを握り直した。
「もう理論上の計算値は上回っている。念には念を入れて、というだけのことだ」
アインスが、静かな口調で答える。
カズミは、小さなため息を吐くと、
「そうか」
傷だらけの顔に微笑を浮かべた。
「はは、こりゃあ楽でいいや。……ここであたしがお前らを倒すことが、アサキを守ることになるんだから」
その笑みの後、その言葉の後、場をしばらく支配したのは静寂であった。
なにを返すことも出来ずに、三人は黙ってしまっていたのであるが、やがて、アインスがおもむろに口を開いた。
「わたしたちに感情があったならば、ここで大笑いしていたのだろうな」
皮肉であろう。
身のほど知らずに対しての。
だが、カズミはそれを受けても、ただ笑みを深くするだけだった。ちょっと照れたような、笑みを。
「よせやい。あたし、お笑い芸人なんかじゃなく……アイドル歌手に、なりたかったんだぞ」
この場において誰も予期し得ないことをカズミはいう。
それだけでは、なかった。
「♪ ララ なにげなく過ごした ラララ きみと夏過ごした ♪」
歌い始めたのである。星川絵里奈の、「きっとほしになって」を。
「♪喧嘩もしたよね いっぱい笑ったよね 短い青春なんかじゃなかったんだよ ♪」
歌いながら、カズミはみんなのことを思い出していた。
大鳥正香、平家成葉。
|万《よ
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