第2部
ダーマ
シーラの転職・前編(ナギ視点)
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えてもらったことがあったの。たしかあたしと同い年の息子がいるんだよ」
「じゃあ今でもノールって人とは仲いいのか?」
オレの質問にシーラは首を横に振った。
「ううん。あたしが遊び人になるって言ったら猛反対してた。もしワーグナーがいたら少しは状況が変わってたかもしんないけど」
「ワーグナー?」
「ノールさんの息子だよ。あたしが家を出るちょっと前にどこかの国に修行に行ったみたいだけど」
「へえ。もしかしたら味方になってたかもしれないってことか」
「そうだね。見た目と中身のギャップがアレだけど」
「は?」
まあ、今はいないやつのことを言っても仕方がない。とにかくまだシーラだということはバレていないんだ。このまま大僧正のところまで行って、転職させてもらわなきゃな。
神殿の扉を通り中に入ると、そこは建物と言うより屋根のある街並みのようだった。
広い廊下を挟む左右の壁には等間隔に扉が連なっていて、それが遥か奥まで続いている。鷹の目でも使わないと全ての扉が見えないくらいだ。
シーラ曰くこの辺りは転職に訪れた旅人や冒険者用の宿や店が連なっていて、必要なものは一通り揃っている。入り口に近いこともあり、何人もの冒険者とすれ違う。まさにひとつの町といったところだ。
ちなみにダーマの僧侶たちが住む区域はまた別の棟にあると言うから、この神殿がいかに広大かがわかる。
大僧正のいる大神殿は、このまままっすぐ行った突き当たりにある。無駄に広くて長い廊下を延々と進むにつれ、次第に人の行き交う姿も疎らになってきた。
「このまま誰にも会わなきゃいいな」
「フラグっぽいこと言わないでよぉ」
フラグってなんだ? と追及しようとしたときだ。突然複数の僧侶が目の前の扉から出てきた。
「!!」
途端、シーラは目を見開き足を止めた。その様子はただことではない。下を見れば彼女の足は震えている。
(おい、どうした?)
オレは小声でシーラに問いかけた。彼女は唾を飲み込むと、目の前で起きたことが信じられないと行った様子で答える。
「あの子、あたしの弟……!」
「!!」
その瞬間、オレは足が凍りついたように動かなくなった。
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