第2部
ダーマ
シーラの転職・前編(ナギ視点)
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レはため息を一つつくと、ぱっと手を離す。
「んな勘当同然の状態で実家に戻るとか、無謀にもほどがあるだろーが。大僧正ってことは、お前を転職させるのもその人なんだろ? それじゃどう足掻いても顔を会わせないと行けねえじゃんか。なんでそう言うことをもっと早く相談しねえんだよ」
「え、でも、こんなこと相談したってどうしようも……」
「要するにお前だってバレなきゃいいんだろ? だったらやるべきことは一つだ」
そう言うとオレは、肩に背負っていた荷物を下ろすと、その中からあるものを取り出した。
「……ナギちん、もしかして本気?」
「ああ、本気さ」
オレは勝ち誇った笑みを浮かべながら言った。
バハラタを出発してから七日目の朝。オレたちはようやくダーマに到着した。
ダーマ神殿は山のてっぺんを削り取って、その上に建てたようなバカでかい建物だった。周りの山々を見下ろすように堂々と建っているその佇まいは、オレから見たら随分と偉そうに見える。それはまるで一つの町のようで、神殿というにはあまりにも規模が大きい。
単に巡礼として訪れる聖職者などはもちろんだが、この世界で唯一転職ができる場所なだけあって、転職を目的に来ている冒険者もちらほらいる。ただ、そのほとんどは十数人程のパーティーで固まっており、どうやら代表者の一人がキメラの翼を使ってここにやってきているようだ。
バハラタからの道すがら思ったことだが、徒歩でここにやってきた人は今のところオレたち以外はいないらしい。
よく考えたらシーラにキメラの翼を使わせれば一瞬でダーマに着くんじゃないのかと道中思ったが、シーラ自身、心の準備が必要なのかもしれない。なのでオレはあえて言わなかった。
神殿の入り口には大仰なくらい立派なデカい扉があり、その前には壮年の僧侶が一人立っていた。おそらく門番だろう。彼は近づいてくるオレたちに目を留めると、ぎょっとした顔をした。
「き、君たちは、転職希望の者か?」
若干顔をひきつらせつつそう尋ねた僧侶は、オレたちの姿を眺め回すように見ている。いや、正確には、シーラの方を凝視している。
「ああ。といっても、オレじゃなくてこいつだけだけど」
オレは斜め後ろにいるシーラを視線で指した。門番は神妙な顔をしていたが、やがて自ら納得したように頷いた。
「我々ダーマの者は新たな道を望む者に平等に機会を与える。この奥にいる大僧正にお会いになるといい」
そう言って門番はゆっくりと扉を開けた。この先に、大僧正ってやつがいるらしい。
「ありがとな」
オレは適当に手を振ると、後ろをついてくるシーラと共に扉を通った。
どうやら、シーラとは気づかれていないみたいだな。
オレは小さくほくそ笑むと、シーラを肩越しに見た。彼女はいつもと違い、どこかよそよそしい仕草で
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