第2部
ダーマ
シーラの転職・前編(ナギ視点)
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もしていたのか、一拍置いてから狼狽えるように返事をした。
「え? あ、うん、そうだよ? ここから見てもやっぱり大きいよねぇ」
どこか心ここにあらずといった面持ちで、シーラは視線の先にあるダーマ神殿を見つめる。なんとなくだが、歩くスピードが鈍くなっているような気がする。
「……なあ、勘違いだったらいいんだけどよ、ダーマに行くこと躊躇ってねえ?」
オレは単刀直入に聞いてみた。シーラはびくりと一瞬体を硬直させたが、すぐにいつもの能天気な顔に戻ると、
「やーだ、ここまで来て何言ってんのナギちん! あたしの意思は固いんだから!」
そう言って何かを取り払うような笑顔を見せた。
オレはイシスでルカにもらったキメラの翼を鞄から取り出し、シーラの目の前にちらつかせる。
「別に町に戻りたきゃ、これ使っていつでも行けるぜ? 酒も飲めるし」
我ながらなんて意地悪なんだろう、と自嘲する。シーラは瞠目したが、すぐに頭を振ってオレから視線を逸らした。
「ホントナギちんって意地悪だなあ。そんなんじゃ女の子にモテないよ?」
「いや別にオレ、ビビアンちゃんがいれば十分だし」
「……」
「誰かダーマにお前のことを悪く言う奴でもいるのか?」
オレの質問に、シーラは閉口する。それは肯定と受け取っていいんだよな?
「ま、言いたくないなら無理して言わなくていいんだけどよ」
もしダーマに着いてこいつが何か嫌な目に遭った時、何も事情を知らないオレはこいつを助けられる自信がない。だから聞けることは聞きたかったのだが、本人が言いたくないのなら仕方がない。
彼女の答えを待たず、オレは一人先に歩き出す。すると、背中越しにシーラがオレを呼び止めた。
「あ……あのね!! あたし……、親に見放されたの」
その一言に、オレは立ち止まって振り返る。
「出来の悪いあたしは弟といつも比べられてて、ずっと周りの期待に応えられなかった。あたしが遊び人になって神殿から出た時も、誰一人心配なんてしなかった。たぶん今も、あたしのことなんて誰も気にしてないと思う」
振り向くと、シーラは今にも泣き出しそうな顔で立っている。今まで明るく振る舞っていたのが嘘のように、精神的にも限界が来ていたのかもしれない。
「でも、このまま遊び人としてレベルアップしても、ユウリちゃんの役に立てない。だから、皆と一緒に戦えるように、絶対に転職しなきゃならないの。そのためには一刻も早くダーマに行かなきゃならないけど……、やっぱりちょっと怖いかな」
「……」
最後にひきつるような笑みを見せるシーラに近づくと、オレは力をいれずに彼女の両頬を引っ張った。
「はえ?!」
「あー、すまん、ついあの陰険勇者みたいなことしちまった。つーか、んなことより、そんな大事なことは早く言えっつの」
オ
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