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俺様勇者と武闘家日記
第2部
ダーマ
シーラの転職・前編(ナギ視点)
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のベギラマで鍛えられたのではないかと頭をよぎったが、気分が悪くなったので考えるのをやめた。
 バハラタからダーマまではおよそ一週間。その間に立ち寄れる町や村などはほとんどないらしい。なのでこれからしばらくは野宿ということになるのだが。
「はあぁ〜、これからしばらくお酒が飲めなくなるの辛い〜」
 二言目には酒だのワインだの言っているシーラの嘆きに、前を歩いていたオレは仕方なく顔を向ける。
「あーもう、いちいちうるせーよ。どのみち酒なんて買う金ねーだろーが」
「ううっ、近くに格闘場でもあればお金たくさん稼げるのに……」
「これから僧侶になるやつが賭け事なんかするなっての」
 そんな下らないやり取りをしながら、オレたちはダーマへと続く山道をただひたすら歩く。途中魔物に出くわしたが、半年近くこの辺りの魔物を倒し続けたオレたちの敵ではなかった。
 ところが、シーラに至っては、野宿五日目頃には禁断症状が出始めた。夜中にひたすら『酒場に行きたい』と寝言を呟くのはもちろん、戦闘中に突然退治する魔物のオッズを口走ったり、どの魔物が最後まで生き残れるかを予想したり、とにかく日常生活に支障を来すほどの症状が現れ始めていた。
「いや、お前どれだけ酒と賭け事に依存してんだよ!」
 思わずそう叫ばずにはいられなかった。そんな彼女は野宿六日目にしてひたすら携帯食料を貪っている。
「ううっ、ナギちんにはこの辛さがわからないんだね」
「わかりたくもねーよ!」
 とは言え、こいつのこの状況は異常だ。今まで旅をして来て、何日も酒や賭け事とは無縁だったときはあったはずだ。にも拘らずなんで今回に限って極端な行動を起こすのか――。
「あ……!」
 今オレたちが向かっている場所。それは言わずもがな、シーラの故郷である。家出をするくらいだ、故郷には嫌な思い出もあるのだろう。それでも行かなきゃならない心情を考えれば、こいつが無意識にこういう行動を起こすのも仕方ないことなのかもしれない。
 オレはちらりとシーラを盗み見た。一心不乱に食事をしている様は、どこか痛々しい。それは見る人によっては、無理をしているようにも見えた。
 そうとわかってからは、どれだけあいつが不満を言おうとも、オレは口うるさく言わないようにした。まあ、どうしても我慢できないときはついツッコミを入れてしまうけれど、それでも普段よりは大目に見ているつもりだ。オレはミオみたいに、人に優しくすることも不条理に耐えることも出来ないけれど、自分なりにサポートはするつもりでいる。ああ、大人だなあ、オレって。
 そんなオレの配慮を知ってか知らずか、鷹の目を使わずとも遠くに大きな神殿が見えるようになった頃、シーラの口数が極端に少なくなった。
「あれがダーマ神殿か?」
 隣でオレが尋ねるが、シーラは無反応。いや、考え事で
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