第二章
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「これはね」
「大きいのね」
「そうなのよ、だから止められないわ」
「ううん、貰えるってことがそんなに大きいのね」
塾でアルバイトをしている牧子はそのバイト代に満足していて翠の話を聞いてもそんなものかと思ってだった。
この時は実感していなかった、だが。
ある日塾の授業の後でだ、先生達の会議が長引いて。
家に帰った時はもう深夜で母に言われた。
「あんたコンビニで何か買ってきた?」
「いや、何もよ」
母にこう返した。
「別にね」
「そう思ってたのに」
「晩ご飯ないの」
「あるけれど今日は烏賊フライともやしのナムルよ」
「烏賊もナムルもね」
どちらも牧子の嫌いなものなので眉を顰めさせて応えた。
「ちょっと」
「ご飯はあるけれどね」
「どうしようかしら、こんな時に」
ふとだ、牧子は思った。
「お弁当があったら」
「コンビニで買ってくればよかったのに」
「今そう言われてもよ、どうしようかしら」
牧子はまた言った。
「どうして食べようかしら」
「冷蔵庫に卵あるわよ」
「じゃあ卵かけご飯にするわ」
それならとだ、牧子は応えた。そうして実際にこの夜彼女は卵かけご飯で済ませた。食べつつこの時弁当があればと心から思った。
それで次の日翠にこのことを話してから言った。
「あんたが何でお弁当屋さんにいつも行くかわかったわ」
「何かあるとそれだけで心強いでしょ」
「食べるにあたってもね」
「私一人暮らしだし余計によ」
「助かるわね」
「朝は適当に食べて」
そうしてというのだ。
「お昼と夜はお弁当、他のものを食べたいならね」
「食べるのね」
「いつも貰ってるから食費はその分浮くし」
「そのこともいいのね」
「そうよ、お弁当屋さんいいわよ」
翠は笑顔で話した、そして牧子はその通りだと頷いた。弁当屋で働くことは実に素敵なものであると。
お弁当屋さんは素敵 完
2022・10・19
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