怪獣じゃない
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顔を傾け、アカネは振り向いた。
「……アンチ君」
「さっきの子……あの子が、トレギアのマスター……!」
隣で、ハルトも細々と声を上げた。
「アンチ君、何?」
「ここは危険だ。出るぞ」
「その必要はないよ」
天井から降って来た言葉とともに、黒い雷が炸裂する。
真司は慌ててアンチを引き寄せて自らの背中を盾にし、さらにそれより前にハルトが立ちはだかり、指輪を発動させた。
『ディフェンド プリーズ』
赤い魔法陣が黒い雷とせめぎ合う。相打ちしたものの、ハルトは数回よろめいた。
「お、おいハルト! 大丈夫か!?」
「ま、まだ大丈夫……っ!」
ハルトは歯を食いしばりながら、雷の発生源を見上げる。
そして彼は、呟いた。
「トレギア……」
その名前を耳にした途端、真司もまた顔を上げた。
破壊されていく天井に、蒼い闇、ウルトラマントレギアがゆっくりと降りていく姿があった。
「やあ、ハルト君……」
トレギアは広場に着地し、ハルトを指差す。
「やはりここに来たね。もう体も限界なのに、大変だねえ」
「トレギア。知り合い?」
心底興味無さそうに、アカネが口を動かす。
トレギアは肩を窄めながら答えた。
「ああ。知り合いさ。随分と長い三t年…宿敵さ」
「ふうん……」
アカネはつまらなさそうに首を振った。
ほんの昨日、確実に真司とアカネは会っている。それなのに、アカネは頑なに真司のことを認識しようとしていない。
「どうでもいいけど、参加者なんでしょ? だったらさっさと倒してよ、トレギア」
「ああ。そうしようか……ならマスター……君は、ムーンキャンサーのところに行こうか」
「うん」
「行くな……! 新条アカネ……!」
「うるさいよ」
だが、必死なアンチにも、アカネは冷たく突き放つ。
だがアンチは、すでに駆けだしている。真司とハルトが止める間もなく、彼はアカネの腕を掴んだ。
「なぜ俺に命を与えた?」
アンチはきっと睨み上げる。
だが、遠目の真司からは、それは親にすがる幼い子供のようにも見えた。
そして、母親は容赦なくその手を振り払う。
「君はもう怪獣じゃないよ」
冷たい目で、彼女はそのままアンチを突き飛ばす。
「怪獣は人の気持ちを読んだりしない……」
アカネの口からその言葉を耳にした途端、ハルトは反射的にトレギアを見上げる。
彼女と似たようなことを、トレギアも言っていた。それは偶然か否か。
アカネは続ける。
「なんで君は私を助けようとしてたの? 怪獣はね、人に寄り添おうとしないんだよ? 人の幸せを奪ってくれる、それが怪獣」
近くで何かが落ちた。
瓦礫
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