怪獣
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力の激突。対照的な二つの力が見滝原の嵐の中でより大きな爆発を引き起こす。
ウィザード、トレギア、そしてアンチを巻き込むそれは、三人それぞれの異能の力を解除させ、水が張った道路に放り投げた。
「ぐっ……」
体が地面に接触した瞬間、我慢していたイリスとの戦いの傷が再び疼く。
全身に走る痛みに身を屈め、吐血。
「おやおや……思っていたより重傷みたいだね……」
笑みを浮かべた霧崎。
傘を刺し、そのまま、ハルトとアンチに最後の一撃を与えようと近づいてくる。
だが。
「……っ!」
突如として、霧崎は顔を歪める。
数歩、その場で足踏みをした霧崎は、その手から傘を手放してしまう。そのまま風によって傘がどこかへ流されていったと同時に、霧崎は膝を折った。
「な……に……?」
霧崎がここまで驚いた表情は見たことがない。余裕を崩し、振りつける雨に容赦なく体を濡らされていく。
「まさか……ここまで追い詰められるなんてね……!」
「新条アカネをどうするつもりだ! トレギア!」
ハルトよりもいち早く起き上がった人間態のアンチが、霧崎へ怒鳴る。
その口より放たれた、知らぬ名前に、ハルトは思わず眉を顰めた。
「新条アカネって……もしかして、さっき駅に走っていったあの女の子か!?」
令呪を持っていた、あの眼鏡の少女。
ならばと、ハルトは見滝原中央駅を見上げた。
あのムーンキャンサーのマスターが彼女なのだろうか。そして同時に、トレギアのマスターでもあるのだろう。
霧崎は「やれやれ」と首を振り、
「アンチ君……君はどうやら、彼女のことを全く理解していないようだね」
「何!?」
歯をむき出しにするアンチに対し、霧崎は冷笑する。
「彼女が求めるのは、思いやってくれる優しい存在じゃないよ。彼女が求めるのは……この世界全てを破壊してくれる、怪獣だけだよ」
「俺は怪獣だ!」
だが、霧崎の言葉を奪ったアンチに対し、霧崎は大笑いを始めた。ごうごうと振り続ける雨の中にも関わらず、彼のその笑い声だけは強く響いた。
「怪獣! 怪獣! アンチ君、君は、今の自分が怪獣だと!?」
大きく顔を歪める霧崎。人間にはとても出来ない恐ろしい表情に、ハルトは思わず背筋を震わせる。
「君はもう、怪獣とは言えないしね」
「何? ……うっ」
アンチは突然の痛みに、右腕を抑えた。
霧崎は続ける。
「怪獣は、そうやって誰かを助けようとしないからねえ。人に寄りそうことも、思いやることもない。怪獣を求める新条アカネが、君を受け入れるのかな?」
霧崎の言葉に、アンチは表情を固まらせる。
霧崎は続けた。
「彼女はもう、君には興味はないよ。ムー
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