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銀河日記
夜の街、月夜の下で
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眼が、書類の文字を読み取っていた。普通は多少の笑みや苦笑などがあるはずの台詞に際しても、口の動き以外に顔の筋肉は動いていなかった。

アルブレヒトは驚きと共に、この人事異動の理由を理解した。配属場所は新規創設、生まれ立ての分室であり、監察局員の数が足りないわけではない。自分はあの件で左遷されたのだと、彼は思った。間違いだとは思わなかった。当然の成り行きでもある。
「中佐、我々の仕事は名前の通り書類の監察だが、会計書類と補給任務に関する者が多くなるだろう。いや、殆どがその類だろうな」
「何故、そのような事が御分かりになるのです、分室長殿?」
オーベルシュタインの言葉にアルブレヒトは疑問を覚えた。この部署は新設されたばかりであるなら、仕事の主流などはまだ把握できない筈だ。それなのに何故この上官はそれを理解しているのだ、と。事前に、上からの通達でもあったのか?中々、腑に落ちなかった。

「無論、私が行っている書類がそれだからだ」
「・・了解しました」
一瞬ジョークにも取れる発言をしたことに、アルブレヒトは驚いた。後世、永久凍土の石板などと言われる男がこんな発言をするとは考え付かなかったからである。


「中佐、デスクについて仕事をしろ。卿の分の仕事も、ちゃんと用意してあるのだ」
「畏まりました、分室長殿」
目の前の上官の特徴である義眼に見据えられ、アルブレヒトは背筋を伸ばし、直ぐに席について書類のチェックを始めた。案外、閑職でもなさそうだと、彼は思った。彼にとって、閑職という言葉は、仕事が無いところを意味していたからである。個人が持つ単語の辞書では、定義が異なるらしいことを、如実に物語っていた。



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