夜の街、月夜の下で
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識には一理ある。だが、いいかね中佐、卿は軽率すぎたのだ。相手が貴族であろうと、卿と同じく帝国騎士でもあれば、副総監のように伯爵のような貴族もいるのだ。そこを以後、忘れぬように」
「はっ、肝に銘じさせていただきます。それと憲兵総監閣下、一つ御伺いしてもよろしいですか?」
「なんだね、中佐」
退出のための敬礼をする前に、アルブレヒトが訪ねる。すると、クラーマーは眉間に皺を寄せた。
「この決定は閣下方の御判断と小官の方で判断してよろしいでしょうか。御教え頂けないと、釈放許可書の提出ができませんので」
その言葉に、二人の将官の眉が、それぞれ異なった形で動く。
「そんな事は卿が知るべき事ではない。御苦労だった。それと、卿の麾下の第三十二武装憲兵大隊の訓練計画は許可しておく」
「早く職務に戻りたまえ、デューラー中佐。卿にはまだ仕事が残っておろう。」
二人の上官達は語気を強め、目の前の士官を追い払うように、退室を命じた。アルブレヒトは、沈黙を携えたまま敬礼をして部屋を辞した。だが、その光景で疑念を確信に変えた。
部屋を出たアルブレヒトの前には、一人の士官が立っていた。
「お疲れ様です、大隊長殿。やはり、駄目でしたか」
「ああ、すまんな、キスリング大尉。あの阿呆貴族、いや、アーヘン男爵閣下は二時間後に釈放だ。地上車と釈放許可書の手配を頼む。それと、訓練に総監のお許しが出た」
「はっ。釈放の件は誠に残念ですが、大隊の訓練の許可が出ただけでも、喜ぶべきかもしれませんな」
「そうだな、卿の言うとおりだ。」
キスリングと呼ばれた若手の士官は上官の命令を受け、立ち去って行った。彼は大隊の副長であり、実力は優れていた。アルブレヒトも、彼に多くの信頼を置いていた。
それから二時間後に、男、アーヘン男爵は釈放された。釈放される際には、自らを逮捕した士官に、憎悪の視線を浴びせかけようとしたが、黄玉色の視線によって睨み返されたため、それを断念し、用意された地上車にそそくさと乗って帰って行った。
それから二週間後、アルブレヒトは軍務省人事局への出頭命令を受け、そこで異動命令を伝えられた。軍務省第五監察局第二分室副室長という役職を与えられることとなった。異動は三日後となり、それまでの時間は大隊の引き継ぎなどに時間を費やした。
そして、三日後に、異動先の分室へと向かった。
「申告します。本日付で、軍務省第五監察局第二分室副室長を拝命しました、アルブレヒト・ヴェンツェル・フォン・デューラー中佐であります。」
「着任御苦労、分室長のパウル・フォン・オーベルシュタイン中佐だ。分室長と言っても、此処は昨日開設されたばかりだ、気にしないでほしい」
アルブレヒトの申告に、デスクで書類を整理していた士官は淡々とそう告げた。常に妖しく光り輝く義
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