第七十七話 約定
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いすぎていたようだ。
「ポワン様は変わりないだろうか?」
アベルの言葉にベラの表情が曇る。
「そうね…………。人間界に魔物が増えてきたのは何年も前から知っていたけれど、妖精界でも魔物が活発化してきたの。フルートの件以来は平和だったのに。今は妖精郷には何の影響も出ていないけれど、ポワン様は郷の守りに更に力を費やすようになったわ。…………あの方は戦いが得意ではないというのに」
彼女も彼女で相当な苦労があったのだろう。
最初に会ったときとは打って変わり、ベラは苦々しさを顔に浮かべていた。
「けど、こうしてアベルがまた来てくれるなら大丈夫よね。きっと!」
笑顔を浮かべ直し、ベラは玉座へと通じる扉を開く。
「ポワン様、今日は客人が来ています! それも誰だと思いますか?」
「まぁまぁ、ベラったら。私はちゃんとわかっていますよ」
玉座に腰掛ける女性は、私と比較したら小柄だったけれど、それでも妖精という観点から見れば十分大きな背丈をしていた。
少なくともタバサよりは高い。
そして美しい。紫水晶のような髪も。白く透き通った肌も。聖母のような穏やかさをたたえた笑みも。
彼女の美しさは人間が誇りや魅了のために磨き上げるような美しさとは違う、健やかな自然を見るような美しさ。
そんな印象を彼女は私に抱かせた。
「久方ぶりですね。アベル。あの時の幼き少年が、大人になるほど時は流れたのですね。そしてその流れは邪悪や勇者の存在など、世界にあらゆる漣をたてました」
慈愛に満ち溢れた顔は一転、ポワンは表情を妖精の長としての厳格なものに変える。
しかし、冷徹ではないその顔が、どこか人間味を感じさせた。
「かつて私があなたに立てた誓いを今果たすときが来ました。あなたが何を求めて、この地に再び足を踏み入れたか。私は既に知っています」
「それなら、壊れたゴールドオーブを再び作れるのですか」
「いえ。それは違います」
アベルの希望を打ち砕くかのように、ポワンは首を横に振る。
「ゴールドオーブは私などより偉大な、遥かな先代が作りしもの。あの大いなる神秘を、私には再現できない」
「それじゃあ、どうすればいいの!?」
「オーブが壊れたままなら、あのお城も沈んだままになります……」
子供たちが慌てる中、アベルはわずかな焦りすら浮かべなかった。
「ポワン様。あなたがそれで終わらせるような方とは思えないです。何か、方法があるのですよね?」
「はい。その通り。あなた達が求めているのは『新たなゴールドオーブの製造』ではなく『ゴールドオーブそのもの』。それならば手段はある」
ポワンは眼前に無数の光の粒子が集い、凄まじい速さで宝玉を形成していく。
「あれ? これってゴールドオーブ?」
「違うわお兄ちゃん。同じものは作れないならこれは……
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