後始末と人事異動
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にされた言葉に、彼女はなんて言えばいいのかしら、と内心呆れた。
「暇になったら、また屋敷にいらっしゃい。また一緒に、御茶でも飲みましょう」
「はい。誠に有難い御誘いなのですが、自分はこれから忙しくなり、異動もありますので、お相伴に預かるのは当分先になってしまうかもしれませんが、それでもよろしいでしょうか。もし、ベアトリクス様から日時を御指定して頂ければ、私の方で、調整致しますので…」
アルブレヒトがその先を言おうとすると、ベアトリクスは右手を二回程、宙に泳がせた。
「アルブレヒト、別にそこまで気を遣ってくれなくてもいいわ。マグダレーナと飲むのも楽しいけど、貴方と一緒の時は落ちつけていいの。たまには、殿方とも飲みたくなるのよ。こうも、女ばかりだとね」
最後は苦笑しながら、若年の侯爵夫人は三歳下の少佐に告げた。その言葉は、柔らかい音色に包まれていた。
「畏まりました。では、機会があれば、喜んで参上いたします」
「ありがとう。その時は、マグダレーナもそうだし、アンネローゼとも一緒になれればいいのだけれど・・」
会話の中で聞こえた名前に、アルブレヒトの脳内をある言葉が駆け巡った。
目の前の女性の言う、“マグダレーナ”の言葉が指しているのが、ヴェストパーレ男爵夫人マグダレーナであることは、以前の会話で知っている。
では、アンネローゼとはいったい誰のことなのか?一人だけ、アルブレヒトには心当たりがあった。だが、それを素直に確信する気には、なれなかった。
「ベアトリクス様。アンネローゼ、とおっしゃいますとアンネローゼ・フォン・グリューネワルト伯爵夫人の事ではございませんか?」
「ええ、そうよ。それがどうしたの?」
少しきょとんとした感じで帰ってきたベアトリクスの返答に、アルブレヒトは少々考え込んだ。
グリューネワルト伯爵夫人アンネローゼ。旧名はアンネローゼ・フォン・ミューゼル。オーディンに住まう帝国騎士の貴族、ミューゼル家の長女にして、ラインハルト・フォン・ミューゼルの実姉。宮内省の官吏に見出され、十五歳で新無憂宮(ノイエ・サンスーシ)の後宮に上がり、皇帝フリードリヒ四世の寵を一身に受ける女性。皇后は風邪が原因で亡くなっており、彼女、アンネローゼは伯爵夫人の称号により、事実上、皇帝の妻の座を与えられえている。
後世、ある女性と青年の回想では全ての始まりとされた女性である。だが、それをアルブレヒトは知らない。しかし、“IF”を考えればそうなってしまうのは仕方がないことだった。
ベアトリクスが当主を務めるケルトリング家は、ミュッケンベルガー家とは縁戚関係に当たる。両家は共に侯爵、伯爵という爵位持ちの上流貴族であり、しかも、ベアトリクスはケルトリング家当主の侯爵夫人である。史実でのアンネローゼの友人、ヴェストパーレ男爵
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