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銀河日記
第四次イゼルローン要塞攻防戦
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。それが終われば存分に使う事が出来る。その対象、つまりは使う人間が上司でも自分でもいいのだ、と。かつて、帝都オーディンの佐官用官舎を使っていたメルカッツはそう思った。もう、十五年以上昔の、独身時代の話である。

それから時間が流れ、八月二十二日、自由惑星同盟艦隊三万五千隻はイゼルローン要塞の前面に艦隊を展開させた。それに対する帝国軍も、遠征艦隊も含めた二六〇〇〇隻の艦隊をイゼルローン要塞から発進させ、展開させる。メルカッツ分艦隊は左翼の一部を担当することとなった。

同盟軍艦隊の砲門が開かれ、咆哮する。それに応じるように、帝国艦隊もすぐさま迎撃を開始した。第四次イゼルローン攻防戦の始まりである。瞬間的な恒星が両軍の各地で生まれ、その置き土産として、虚無の空間が両陣営で大量に生産され始めた。

同盟艦隊はトゥールハンマーの射程外に展開し、帝国軍はその射程内に展開し、砲火を交えていた。トゥールハンマーの存在があるので両軍とも近接戦闘を行い辛い状況に会った。そのため、艦艇による長距離砲の撃ち合いが続いていた。

数の上では大きく勝っていた同盟軍ではあったが、帝国軍には一個艦隊を消滅させるほどの破壊力を持った要塞主砲、トゥールハンマーの存在があり、数的有利を利用してゴリ押しに敵を押し込む事が出来ないでいた。

帝国軍の基本戦術は敵の要塞主砲射程圏内への誘因であるため、後退と突出を繰り返していた。そんな展開が二日ほど続き、消耗戦の様相を呈していた。

「司令官閣下、中央部のアルフレット・フォン・ベルカ准将の艦隊三五〇隻が突撃を開始しました!!」
「何?」
戦闘が開始されてから三日目になった八月二四日、帝国軍中央部を担当するベルカ准将麾下の艦隊三五〇隻が突如敵陣への突撃を開始した。

「これでは中央部に間隙が生まれてしまいます。司令官閣下、如何致しますか」
アルブレヒトはその光景を見て、確かな怒りを覚え、そう呟いた。
「大尉、我々が動いても間に合わんよ。中央は中央に任せるしかあるまい。だが、敵があの艦隊を攻撃した後は、全面攻勢に転ずるだろう」
「はい。では目前の相手、敵右翼の撃破に専念なさるということでしょうか」
「そういうことだ。それと大尉、司令部からの命令を見逃さぬようにしておいてくれ、後退命令を見逃しては我々が孤立してしまうのでな。」
「はっ」
メルカッツは若い副官を宥めるように言うと、アルブレヒトは落ち着きを取り戻し、上官の言わんとする処を悟った。

左翼を担当する彼らでは中央部のフォローは出来ない。敵が全面攻勢に転ずる前に、敵の戦力を少しでも削ぐことに専念するべきだ、と。

それから四時間後、ベルカ准将の艦隊は損害率八割となって、ほうほうの体で要塞内に逃げ帰った。全滅といってよかった。敵の中央艦隊が半包囲の陣
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