第四次イゼルローン要塞攻防戦
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。近接戦となれば、戦闘艇も繰り出してくるでしょう。」
「・・・確かに、その場合は拙いな。・・だとしても、デューラー大尉。敵がその並行追撃を囮にすることは、可能性として考えられんかね。」
「その場合は、要塞主砲射程限界まで艦隊を展開し、我が帝国軍の注意をそちらに集中させ、その間に、回廊外延部の危険宙域ギリギリを迂回させ、要塞主砲の死角よりミサイル艦艇などの分艦隊で攻撃を仕掛けるという作戦が考えられるでしょう。ですが、その作戦は、分艦隊による攻撃が失敗した場合、作戦そのものが一気に瓦解する危険性を多分に含んでいます。早期に撤退しなければ決め手を欠き、消耗戦に陥ります。それに叛乱軍ミサイル艦艇は防御面に難のある艦艇で、進軍ルートの途中で予備兵力なりの艦隊と遭遇した場合、長期に渡って戦線を維持することが出来ません。同程度の兵力を差し向けられれば、彼我の差が表面化し、直ぐに前線が崩壊します。孤立無援の戦いを強いられることになるでしょう。成功の確率は低いと小官は考えます。それがこの作戦の脆さでもあります。以上です」
アルブレヒトは上官への説明を終えた。
「わかった。御苦労。参考にさせてもらおう。一時休憩を許可する」
「はっ、では、小官は一旦、失礼いたします」
自分の上官に敬礼をして、アルブレヒトは艦橋を辞した。タンクベッド睡眠を取るためである。彼は補給の手配などでメルカッツの補佐に勤しんでいた。同盟艦隊との間で要塞攻防戦が開始されれば、軽い食事は取れても、睡眠は順番が回ってこない限りは中々取りにくいものとなる。本能的な睡眠でも、機械的な睡眠であっても、ちゃんとした休息は取っておくべきものであった。
年若い副官が去ると、ビスマルクUの提督椅子に座ったまま、メルカッツは小さく、近年、数えられる皺の数が増え始めた眉間を数回、ゆっくりと揉んだ。
確かに、アルブレヒトが辺境勤務時代に鍛えた補給や事務に関する能力などは、まず有能と言っていいだろう。目の前の戦闘に対しても大きな視野での見解を持って対策を考えている。貴族と言っても最下級の帝国騎士の生まれの故か、平民出身の士官たちとも気兼ねなく話すフランクなところもあり、勤勉さなど、問題点はあまり見受けられない。
ただ、一つ問題があるとすれば、少々勤勉すぎるところであろうか。提督である自分の職務を己が出来る限り支援し、常に万全の態勢で戦闘に臨むように手配を惜しまない。食事を取る事を忘れていた、なんて事も幾度とある。少々、焦り過ぎているように感じたが、若さに反して昇進や功績にかなり無関心であった。
あれは一種の凝り性だなとメルカッツは思い、苦笑を浮かべた。彼にとって裏方の任務は官舎の掃除と同じなのだ。使用者が出来る限り快適に使えるように準備する、自らはその為に徹底的に働いて汗を流し、達成感を得る
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