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銀河日記
卒業と任官
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レヒトなど大胆にも、教頭の段階で眠りの世界に旅立とうとしていた。一応、彼はこの式の前に眠気覚ましのためのブラック・コーヒーなどを飲んでいたので、まだかろうじて意識はあるが、睡魔への降伏は時間の問題だと彼の周囲の人間は思った。興奮剤の一種であるカフェインも、今回の事態はその仕事の許容量を超えていたらしい。

帝国軍士官学校の第四七二回目の卒業式は、何事もなく、無事に終了した。今年の卒業生三〇五五人が、士官学校の校門を一人、また一人と去っていく。彼らは、卒業式の前日に軍務省人事局からの配属通達を手渡されており、これからは任地への出立など、卒業生はそれぞれ何かしらの準備に追われることだろう。士官学校卒業生全員が少尉に任官される。同じく帝都に存在する、帝国軍幼年学校の卒業生は准尉任官だ。

「俺は統帥本部勤務だが、卿は何処に派遣されるのだ。デューラー」
「俺は、辺境警備第三艦隊戦術参謀だ。宇宙海賊の討伐が中心になりそうだな」
ルッツがそう言うと、アルブレヒトは少々がっかりしたような声で返す。てっきり、自分がイゼルローンなりの前線に飛ばされるかと思っていたのだが、前線には変わりないにせよ、どことなく危険臭の漂う任地だと彼は感じた。
「そうか、俺は宇宙艦隊で当分、オーディン周辺の警護に当たる事になるようだ。新米だから仕方のない事だが」
ファーレンハイトも、少し肩をすくめて言った。
「まぁ、いつかはこのオーディンに戻ってくる。その時には、3人で、一緒に酒を飲もう」
「ああ、デア・シュプリンガーでな」
「必ず」
アルブレヒトの言葉に、頷きながら、三人は校門から出て、拳を軽く突き合わせ、それぞれへの家路についた。


銀河帝国軍士官学校を帝国歴四七六年六月六日に卒業した、アルブレヒト・ヴェンツェル・フォン・デューラーは少尉任官後、辺境警備第3艦隊戦術参謀として派遣される。戦略研究科を卒業した新任士官でも、人員調整などの理由が重なれば、辺境警備艦隊に派遣されることもあるのだ。

だが、同年十二月十五日、艦隊後方主任参謀ロベルト・フォン・ツォレルン大佐の十二指腸炎による予備役編入により、辺境警備第三艦隊司令官、ライナー・ハンス・ハイデッカー准将の命令で急遽、中尉に昇進し、戦術参謀の任務の傍ら、後方参謀を兼務することとなったが、それが彼の疲労の日々の始まりであったのだ。

この警備艦隊後方参謀部は、ツォレルン大佐一人が支えていたと言ってよい現状であり、他の士官は兵站専攻科出身や戦略研究科出身と言っても、門閥貴族出身の士官で、特別枠出身者がほとんどであった。ツォレルン大佐は、貴族とは名ばかりの貧しい帝国騎士の出身であり、相手が幾らボンクラと言っても実家の権力と武力を傘に恐喝されては、仕事を一人で受けるしか方法が無かったのである。十二指腸炎を引き起
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