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銀河日記
夜間歩哨
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二年下の後輩、ルイス・フィリップ・レンブラント候補生の入学から一年が過ぎ、また新たな候補生が士官学校の扉を叩き、そしてそれと入れ替わるように、また多くの士官候補生が任官し、学び舎を巣立って行った。

四七四回目の新入生も士官学校での生活にほとんど慣れてきた10月の中ごろ、午前の講義が終わるとアルブレヒトは戦術理論の教官に呼び出された。

彼は、この間、講義の課題で提出した戦術研究レポートにケチをつけられたかと思ったが、教官室に行ってみるとそうではなかった。教官の部屋に入ると、そこには学友であるファーレンハイトの姿もあった。そしてその隣には、藤色の瞳を持つ士官候補生も立っていた。

「卿ら三名には今夜、寮周辺の歩哨の任についてもらう。これは新規候補生指導担当教官としての命令である。各員、誠心誠意、務めるように」
「はっ。謹んで拝命いたします」
部屋にあるデスクの椅子に重々しく座った教官の命令が部屋に響いた。

呼び出された三人の士官候補生は、これまでの学校生活で体に身に染み付いた動作をしてから承諾した。その後、三人にはそれぞれの担当の区域を示したプリントが配られ、退出を命じられた。
「では、俺は指示通りA地域を担当する。頼むぞ、アーダルベルト」
「卿に言われずともわかっている。アルブレヒト。すまないが、卿は・・」
「ルッツ、戦略研究科在籍のコルネリアス・ルッツだ。よろしく」
「俺はアーダルベルト・フォン・ファーレンハイトだ。所属は卿と同じ戦略研究科だ。よろしく頼む」
「紹介が遅れた。俺はアルブレヒト・ヴェンツェル・フォン・デューラーだ。所属はアーダルベルトと同じだ。よろしく、ルッツ」
アルブレヒトは同級生の名前に驚いたが、思考を目前の仕事に切り替えて三人は夕食を同じテーブルで取りながら、担当区域の確認などの打ち合わせをした。

そして完全に夜の闇に包まれた二一時30分から、彼ら三人は歩哨を開始した。

銀河帝国軍士官学校における歩哨は、基本的に四年生に課されており、その担当者となる士官候補生の人選は、毎年の新規候補生指導担当教官が決めることとなっている。そのため、成績が芳しくない者などへの一種の懲罰と選考者である教官が認識している部分も確かにあり、改善が求められる点ではないかとアルブレヒトは歩きながら思った。

そして、問題はそれだけではない。少々、話がそれるが、銀河帝国軍士官学校にはもう一つ困った制度がある。“各研究科特別枠”。その名前だけを見ると、奨学金などの制度があてはめられそうな名称である。だが、士官学校の財源が国費である以上、生徒が負担する費用は無料なので、士官学校に奨学金の必要性など存在しないのは明白である。

この特別枠を、簡単に言ってしまえば、高級軍人や門閥貴族の子弟の落第防止のための制度なのであ
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