夜間歩哨
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か、まぁいい。卿の言うとおりだ。それと、襟元に少しだけ口紅が付いているぞ。香水の匂いも一緒だ。じゃあな。くれぐれも、寝坊するなよ。」
アルブレヒトはほんの少しだけ、からかうような口調で門限破りをした後輩にそう言ってから、その場を去った。その後、歩哨を行ったA区域の残りでは、誰一人として会うこともなく、何も問題も無かった。それに安堵して、彼は自分の部屋へと帰っていった。
自分の目の前から去った男の背中と、立ち去った方向を見つめながら、ロイエンタールは考えていた。自分の事を直ぐに見破った男。しかも、自分の目に驚きもせず、だからと言ってこれといった興味も示さず、ただ、苦笑していた。目撃した門限破りを教官に報告しようとするわけでもなく。ただ自分の保身に働きかける点を言って、何事も無いように去っていった。同級生であるビッテンフェルト、ワーレンには驚き、自分には驚かなかった。理由は考えても分からない。
ロイエンタールは、先程の同級生と自分の四人を見逃した男が、銀河帝国軍中将、グレゴール・フォン・ミュッケンベルガーの甥である事を自らの持つ手札で知り得ていた。なかなかどうして、面白い奴がいるものだとロイエンタールは一人、薄く笑みを零した。彼の周りは闇に黒く塗りつぶされ、右手の方向に灯りがともっていた。その後、ゆっくりと寮の中へと戻って行った。
その晩、おさまりの悪い蜂蜜色の髪を持つ士官候補生と、アルブレヒトは出会わなかった。なぜならその日、彼はまだ一年生で、二年生ではなかったからである。彼はそれを思い出し、少々残念がった。誰も、その理由には気づかなかったが。
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