夜間歩哨
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「卿ら、二年、もしくは四年だな」
アルブレヒトにはうろ覚えながら心当たりがあった。それは門限破りの候補生のことではない、学年のことだ。A区域は二年と四年の住む部屋に一番近い、かつて先輩のエルネスト・メックリンガーから聞いたことだが、A区画は門限を過ぎるまで外出していた二年が良く使う区画なのだそうだ。
男達は頷く。アルブレヒトは制服のポケットからペンと紙を取り出した。
「名前と、在籍している科、学年を言え。それともう少し前に来い」
「二年、戦略研究科所属のアウグスト・ザムエル・ワーレンであります」
「同じく二年、戦略研究科のフリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルトであります」
「二年、兵站専攻科のルイス・フィリップ・レンブラントであります」
聞き慣れた声と、聞き覚えのある名前を聞き、アルブレヒトはまた驚いた。
そう言えば、この二人って年齢同じだったな。それにレンブラントの野郎。余計な事をしてくれる。
アルブレヒトは過去の記憶を思い出しながら、対応を決めていた。
「分かった。行け」
アルブレヒトは名前を書き記すと、懐中電灯を後ろに向けて自分の背中側を指した。
「よ、よろしいので?」
「ワーレン候補生。古より“仏の顔も三度まで”という諺があるのでな。今回だけは見逃してやる。だが、次は容赦なく報告するから覚悟しておけ」
驚きをあらわすのに十分な声が聞こえ、アルブレヒトは肯定した。可能な限り、語尾を強調して。
「あ、有難うございます」
そう言ってすぐに横を通り去って行く三人の姿を見てアルブレヒトは苦笑した。まさか、レンブラントが見ない内にあの二人の知己を得ていたとは、アルブレヒトは想像さえしなかったのである。
「それと、いい加減、卿も出てきたらどうだ?」
アルブレヒトは思考を切り換え、たった今立ち去って行った3人が立っていた処より三,四メートル右の処に、明かりの矛先を向けた。影の中から僅かに見える闇に似た色の髪と、非対称の輝きを放つ瞳が印象的だった。そして、薔薇の香りを微かに帯びた空気が、目の前の影とともに、自らに近づくのを感じた。鼻腔を、その場の空気には含まれない、新たな匂いが擽る。
「戦略研究科の二年、オスカー・フォン・ロイエンタール候補生だな?」
「そうだが、卿は?」
呼ばれた目の前の影は頷き、一人の男がその中から出てきた。金銀妖瞳は、異なる輝きを放ちながら、目の前の人物を見据えている。
「戦略研究科四年のアルブレヒト・ヴェンツェル・フォン・デューラーだ。それにしてもロイエンタール候補生、私が言わせてもらうのもなんだが、夜遊びをするには卿は少々若くはないかな?」
「・・ほぅ、卿がデューラー候補生か。それと、一言言わせて貰うと、その様な事、人それぞれだろうに。そうではないかな?」
「そう
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