第三十三章 惑星の意思
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つすぐに前を向く。
前を向きつつ顔を上げる。
砂に足を滑らせつつも、懸命に傾斜を駆け上る。
「屈辱はここに置く。わたしは、あの地下で意思を見た。感じたのだ。触れたのだ。……ここで無駄に死ぬわけには、いかぬ」
走り続ける至垂の、口元には笑みが浮かんでいた。
「呼ばれたのだ。呼び掛けられたのだ。これは暗示。代われと。神の座につけと! 神。わたしが神。ここは、わたしの世界である!」
傾斜を駆け上り切り、勢い余って蜘蛛の巨体が大きく跳ねた。
ひゃはははは、と笑い叫ぶ至垂であったが、その動きが止まっていた。
その笑みが固まっていた。
そして、地に落ちた。
勢い余って僅か跳ね上がっただけなのに、巨体が故か地がどおんと噴き上がってぐらぐら揺れた。
つう、
地に落ちた至垂の、笑み固まった口の端から、血が垂れていた。
ぶっ
蜘蛛から生える魔道着の胸から、なにかが突き出していた。
ぶっ
ぶっ
青白く光り輝く、それは槍? 矢?
背から、胸へと。
至垂の表情が動き出す。
じわりと、笑みから驚きへと、ゆっくり変わっていく。
加え、苦悶、苦痛の色が、浮かんでいた。
ぐ、が、と呻き声を上げた瞬間、首が飛んでいた。
白銀の魔道着を着た胴体から、首が切り離されていた。
至垂の首は、空中に跳ね上がって、くるくる回りながら地に落ちて、転がった。
意思を失い、蜘蛛の巨体は地に崩れた。
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坂を駆け上がり逃げていく至垂の背中を、複雑な思いの視線で追っていたアサキは、
「どうして……」
そうぼそり唇を動かすことしか出来なかった。
予想出来るはずもない突然の出来事に、表情を固まらせたまま。
傾斜の上に、四人の人影が見えた。
黒い衣服に身を包んだ四人。
それは、シュヴァルツたちであった。
シュヴァルツと、それを元に作られた汎用個体であるアインス、 ツヴァイ、 ドライ。
本来は、彼女たちに名前はない。
ヴァイス同様に、呼ぶに不便であるためカズミたちが勝手に名付けたものだ。
「生命を奪う必要は……なかったでしょう!」
アサキは激しい疲労の中なんとかすり鉢の坂を登りながら、シュヴァルツたちを睨んで糾弾の声を張り上げた。
「だが、生かす必要もなかったろう? そもそもこいつは、遊びの世界でのことといえ、お前の両親を殺した相手なのだぞ。ここでも、お前を殺そうとしていた者だぞ。理解、しているのか?」
反対に、シュヴァルツは冷静だ。
アサキをただ動揺させるだけでなく、否定、小馬鹿にするような言葉をやたらと混ぜ込んでくる。
「だからって、生命の奪い合いではなんにも解決
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