六十四 遭遇
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ハッ、と気づいた時には周囲の光景はあまりにも変わっていた。
寸前までの岩々に囲まれる雲雷峡とは真逆の、雨に囲まれる街並み。
濡れた空気に軽く身震いしたアマルは、傍らに視線を投げた。
まだ体力が戻ってきていない様子だが、抉られた肉体の損傷が随分回復しているサスケを認めて、ほっと息をつく。
そうして方々の軒先にぶら下がるモノを見て、アマルは眼を瞬かせた。
天使の形をしたソレは湿った空気に煽られて、力なく揺れている。
確か、天使の折り紙を店先に飾るとご利益があるとかで、雨隠れの里人が軒先に飾っている、お守りのようなものだ。
薄暗い路地裏にて我に返ったアマルは、軒先にぶら下がる天使の折り紙を目にして、そこでようやく此処が雨隠れの里だと気づいた。
「塔へ行け。カブトに診てもらったら、暫く大人しくしていろ」
雲隠れの里から雨隠れの里まで。一瞬で移動したという現実について来られず、呆然とするアマルに、一緒に里までついて来た仮面の男が促す。
一言言い残したかと思うと、仮面の男の空間が再び歪み、気づいた時には路地裏にはアマルとサスケしかいなかった。
(あの変な仮面のやつの術か?)
再び鬼鮫がいる雲隠れの雲雷峡へ移動した仮面の男が寸前までいた場所を気味悪げに見ていたアマルは、気を取り直して、サスケに手を貸す。
鮫肌のおかげで随分治癒は進んだが、治療を中断したせいでまだ十分に回復にまでは至っていない。
話すのも億劫そうなサスケに、脱がせていた『暁』の黒衣を着せ、雨で濡れないようにフードを目深に被らせると、アマルは立ち上がる。
(…とにかく、サスケをカブト先輩のところへ連れて行くか)
サスケに肩を貸し、路地裏から抜け出すと、やはり其処は雨隠れの里だった。
寄せては返す潮騒のような音。
湿った風に煽られて揺れる天使の折り紙。
雨音に包まれる静かな里。
雑踏に紛れて姿を消し、塔へ足の爪先を向ける。
サスケに肩を貸しながら、歩き出したアマルの視線は、塔だけに向けられていた。
だから、気づかなかった。
すれ違った男の正体に。
「……アマル、か…?」
かつて五代目火影になってもらうべく綱手を捜す旅に出た際に出会った少女の容貌をよく憶えている。
弟子が大蛇丸のもとへ向かってしまったと心を痛める綱手をよく見ていたから、知っている。
だから当然、アマルの隣にいたサスケの顔も、よ─く憶えている。
なんせ弟子である波
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