新入生
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ダル)を流され、ジャーナリズム、財界と結託した同盟政府、そしてその指揮下の憲兵(MP)によって住処を追われた。彼は、幼き息子と妻を連れて逃げた。
レンブラントの母であるクリスティーネは、彼女の姓名から察することができるように、帝国からの亡命者であり、五歳の頃、両親に連れられ、フェザーンを経由して自由惑星同盟に亡命した。その後は、大学を出て、国防委員会の事務職などを経て、シャルルと出会い、結婚した。彼女は、人生二度目の、今度は母国への亡命をしようと逃げる途中、遭遇したMPの突きつけた銃口の光芒に胸を貫かれ、その命を絶たれた。射線上にいた夫を庇ったのだ。
家族の死を悲しむ間もなく、残された父と子はフェザーン自治領を経由して亡命し、元々財務官僚上がりであった父は今、帝国の財務省で一官吏として働いている。軍人、文民を問わず、自由惑星同盟からの亡命者は良き待遇をもって遇される。格好の政治宣伝の種であるからだ。そして、敵の内情を知るための情報源でもある。
彼らにも帝国で暮らす権利は与えられた。彼らは帝国の門を潜り、“皇帝陛下の臣民”となったのだから。だが、“叛乱軍からの亡命者”という周囲からの白眼視は常に彼らの周りの纏わりついた。幾ら、彼らへの待遇が良かろうと、それを見る周囲の人々の目は変わらないのだった。
「先輩は、・・私が叛乱軍からの亡命者だと知ったら、どうしますか?」
レンブラントは夕食を終え、部屋に戻ると、同居人に語りかけた。
アルブレヒトは食後のコーヒーを入れるため、備え付けのキッチンに立っている。声は彼の背後から聞こえている。
「それがどうした。卿はこの銀河帝国の人間だろう」
背中を向けたまま、アルブレヒトは淡々とした口調で言った。
「ですが、私は・・」
レンブラントは僅かながら反論するが、そこから先は、言葉を紡げなかった。既に振り返っていたアルブレヒトが自分を睨んでいたからだ。ライトグリーンの瞳は、ただ、目の前にあるスカイブルーの瞳を見据えていた。
「いいか。政争の敗北、民主共和制を旗印とする同盟への憧れ。例えそれがどんな理由であれ、この帝国から同盟に亡命するものだっている。その逆があり得ないと誰が言いきれる。認めろ、レンブラント。卿はもう既に銀河帝国の人間だ。例え、卿がかの亡命帝マンフレート二世陛下のように同盟の地で民主主義の教育を受けて育とうと、フェザーン回廊を抜けて帝国の大地に住んだ時点で、卿はもう帝国の人間なのだ」
「・・」
レンブラントは俯いたまま、何も答えない。
「卿がこの士官学校を卒業すれば、必ず前線に立つ日が来るだろう。あのイゼルローン要塞の奪取を同盟はこの先、幾度も計画し、実行するだろう。イゼルローンに限らず、敵には遭遇するだろう。その時、卿は“自分の故郷の人間だから”と言って引金を引か
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