第二部
第二章 〜対連合軍〜
百三 〜重なる気持ち〜
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べで攻め込んでくるだけの兵も将もおらず、可能性が皆無に近いという結論が出ていた。
つまり、この二つの要塞は全くと言っても過言ではない程備えがない。
無論、此度のように水軍を動かして急襲する事も可能ではある。
……が。
函谷関は洛陽を西から守る為の関であり、潼関に至っては要衝ではあっても関としての防御力は然したる事もないと聞く。
攻め落とせたとしても、守りきるのは容易ではない。
あの周瑜が、その程度の事を知らぬ筈がない。
風が執った処置はあくまでも万が一に備えたもの。
「狙いは、長安か?」
「恐らくな、白蓮」
白蓮のみならず、軍議には紅葉(程普)と菫(韓当)も加わっていた。
埋伏の毒などと器用な事が出来る奴ではないし、信ずるに値するからこそ受け入れたのだ。
他の皆も、誰一人疑いの目を向けるような事はせぬ。
それを確かめると、二人も真名を預けてくれた。
「だけどさ、土方の旦那。天子さまは敵にとっちゃ味方じゃないのか? そこに攻め込んでどうする気なんだ?」
「菫! お屋形に、なんて口の利き方を!」
「いーじゃんか、紅葉。土方の旦那も、構わないんだろ?」
「……好きに致せ。その程度で目くじらを立てるつもりはない」
「ほーら。な?」
「……全く」
まるで、斗誌と猪々子を見ているようだな。
「ふむ。天子さまに、我らが手出しせぬように……という事か?」
「それはどうかしら、愛紗ちゃん。私達がその気になれば、とうの昔に長安を押さえることは可能だったのよ?」
「その通りだ。だが、歳三殿も月殿にも、微塵もそのようなお気持ちはなかった」
疾風の言葉に、皆が頷く。
「名目上はそうかも知れませんけどねー。若しくは、陛下から何かしらの勅令をいただくという事か」
「勅令、ですか……。ですが、これ以上何が必要なのでしょう?」
月が首を傾げる。
偽物と露見はしているが、それでも我らの討伐令は未だ取り消された訳ではない。
今の朝廷に、重ねて我らを糾弾する術はない筈だ。
「いずれわかる事だ。……だが、それが判明するまで構えて手は出すな」
「いいのか?」
呆れたように、白蓮が言う。
「うむ。雪蓮らの言葉、信じても良かろう」
「はい。私もお父様に賛成です」
「……ならいいけど。しかし、歳三も月も、一度信じた相手は疑わないんだな」
この乱世、迂闊に相手を信用するのが危険だとは承知の上だ。
だが、誤っていれば風が、禀が、皆が正そうとする筈。
逆もまた然り、それが我らなのだから。
「疾風、風。動きは逐一知らせよ」
「はっ!」
「御意ー」
……さて、この場におらぬ者に声をかけてくるとするか。
城壁の上に、ぼんやりと座り込む人影。
私が近づいても、気にした様子もない。
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